第三者意見書

  • インキュベーションプロデューサー 長谷 直子 氏

株式会社 日本総合研究所
創発戦略センター
インキュベーションプロデューサー
長谷 直子 氏

「新電元グループサステナビリティレポート2024」の記述を踏まえて、新電元グループの取組みとその情報開示に関する第三者意見を提出します。

今年度のレポートを拝読して、気候変動対応に加え、人権リスクへの対応や人的資本経営に向けた取組みを着実に進めておられると感じました。具体的な所見を3点申し上げます。

まず気候変動への対応についてですが、グループの4つのマテリアリティのうち、2つは環境面のテーマ(「環境配慮型製品による価値提供」と「事業活動と環境の調和」)が掲げられました。サプライチェーンを含む事業活動に伴うCO2排出量を削減するため、Scope1,2,3の削減目標を設定し、SBTi(Science Based Targets initiative)から認定を取得するなど、目標数値の客観性を高めておられます。具体的な削減対策としても、ZEBReady適合建物である朝霞事業所は全電力を非化石証書付CO2フリー電力で賄うほか、複数の関係会社で再エネ由来電力の供給を増やすなど、CO2排出量の削減目標の達成に向けて取組みを加速しておられることを評価致します。貴社製品使用によるCO2削減貢献量についても数値目標を設定し、エネルギー変換効率を高めた電源用ICシリーズや低損失ブリッジダイオード、四輪車HEV用DC/DCコンバータ、電動二輪車向けPCU 、EV/PHEV用充電器などの環境配慮型製品の販売を促進しておられます。「環境ビジョン2050」の柱の一つである「自然共生社会への貢献」は昨今、注目を集めている「自然資本」に関わるテーマです。自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)が公表している重点セクターには半導体も含まれており、今後、企業の責任が問われる可能性がある分野ですので、情報開示をさらに充実していかれることを期待致します。例えば、半導体製造で使用する水を一部リサイクルされているとのことですが、そうした情報を開示していくことも一案と考えます。

2点目は、人権リスクへの対応です。自社及び調達先において発生しうる人権リスクについて、「人権リスクマップ」を用いて影響評価を行い、優先的に対策すべき人権リスクを特定されました。人権デューディリジェンスのプロセスやサプライチェーン調査の結果も開示し、サプライヤーも含めて人権尊重に向けた取組みを進めておられることを評価致します。

3点目は、人的資本経営に向けた取組みです。人財戦略のテーマとして「つながり」を掲げ、「多様で自律的な知と知の融合が新たな価値創造と持続的な成長をもたらす」とのお考えを明確にされています。人財戦略の主要課題「人財育成」「多様な人財の活躍」「柔軟な働き方の拡充」「人権尊重」「安全と健康」に紐付けた形で、重点指標を設定・開示されている点も分かりやすいです。今後は、事業毎にそれぞれの事業課題に応じた人財戦略の落とし込みが行われると、経営戦略と人財戦略の連動性がより強固になると考えます。

最後に、昨今、サステナビリティに関心の高い投資家を中心に「社会的インパクト」への注目が高まっています。貴社の環境配慮型製品の販売促進や人的資本経営に向けた取組みを通じて、環境や社会にどのような影響を与えるのか(社会的インパクト)を見える化し、開示することで、社会課題解決に向けた貴社の貢献度をより客観的な形で示すことができます。例えば環境面では、「環境配慮型製品によるCO2削減貢献量」や「事業活動におけるCO2排出量の削減」等の目標を設定していますが、これらも社会的インパクトを測る指標の一つです。中期経営計画等でこれらを非財務面のKPIとして開示することで、社会的課題解決に向けた貴社の取組み意欲を投資家に対してさらに印象付けることができると考えます。

第三者意見書を受けて

株式会社 日本総合研究所の創発戦略センターインキュベーションプロデューサー、長谷直子様より、当社グループサステナブル活動への貴重なご意見を賜りました。誠にありがとうございます。
当社グループは、サステナビリティ基本方針や「企業ミッション」に則したサステナビリティ経営を実践していくことで中長期的な企業価値向上を目指しています。
これまで培ってきたコア技術の革新と未来に向けた先進技術の創出で脱炭素社会に向けた諸課題の解決を目指すとともに、社会やガバナンス側面での課題解決についても取組んでまいります。

新電元工業株式会社
サステナビリティ推進室
(サステナビリティ委員会事務局)

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