二輪車技術紹介(AC/DC LED H/L制御式レギュレータ/レクチファイア)

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開発背景

現在、新興国で普及している二輪車は、小型排気量が主流となっています。これらのユーザーにとって個人経済面での二輪車の位置付けは日本における軽自動車に相当する物となっています。ガソリン価格も収入を加味すると、相対的に日本より倍以上となります。しかし二輪車を購入して行動範囲を拡大する事が収入機会を増やすことにつながるので、低価格の小型二輪車の需要が多くなっています。
一方、二輪車のフロント部分で存在感がある“ヘッドライト(H/L)”。そのデザインによって二輪車の表情も大きく異なってきます。大型二輪車では高いデザイン性・長寿命・低消費電力等の商品魅力向上を目的としてバルブH/LからLED H/Lへ変化してきており、小型二輪車に対してもその変化が現れてきています。
H/Lの変化に追従していくために、バッテリ充電機能とH/L制御機能の2つを備えている小型二輪車用AC/DC REG/RECTでも、LED H/Lに対応し、高品質かつ廉価で提供できるように開発を行いました。

開発技術の紹介

LEDは電流駆動型の発光デバイスであり、点灯時には安定した電流を流さなければなりません。そのため、一般的にはLED H/L使用時には専用のLEDドライバが必要でした。
従来の小型二輪車用AC/DCバルブ制御式REG/RECTはACGの負側出力を制御してバルブH/Lを点灯しています。そのバルブH/L制御部を定電流制御化することで専用のLEDドライバを必要とせずにLED点灯が可能となりました。またバッテリを用いずACG出力を用いてLEDを点灯するため、バッテリ劣化時やバッテリレス時でも安定した点灯制御ができます。
定電流制御ではHi側、Lo側のそれぞれのLEDを制御すると端子数が増加することになります。しかし本システムではLEDを直列接続して1つの回路で制御を行っています。また直列接続することで並列接続するより消費電流を軽減できます。
この度は小型二輪車用の最適なLED点灯制御を実現するため、REG/RECTの開発に留まらず、LED H/L側の構成も含めたソリューションを提供しております。

  • REG/RECT 外形
    REG/RECT 外形
  • システム図
    システム図

問題の解決手法

LEDちらつき対策

LEDはバルブと異なり通電が途絶えると直ぐに消灯します。ACG出力の負側サイクルで点灯する制御では、ACG出力の正側サイクルで消灯します。そのため、非通電が長くなる低回転域ではちらつきが顕著に発生します。REG/RECT内部に電解コンデンサを搭載してLED両端の電圧を平滑し、さらに1サイクル毎に適切な位相で通電することにより、ちらつきのないLED点灯制御を実現しました。

LED直列接続時における課題解決

LEDを直列接続する場合における下記の課題を解決しました。

  1. 直列にしたLEDの順電圧降下(VF)分以上の電圧が必要となり、バッテリ電圧ではLEDのVFを乗り越えることが難しいため、電圧を昇圧するドライバが必要となります。
    →直列にしたLEDのVFよりも高い電圧が容易に得られるACG出力を直接制御してLEDに印加することでREG/RECT単体でLED点灯が可能となりました。
  2. 1灯が断線した場合、全てのLEDが消灯してしまう。
    →Lo側 LEDが断線した場合、REG/RECT側でLEDに対する出力電圧を上昇させます。LED H/L側でREG/RECTの出力電圧上昇を検出しLED H/L内のサイリスタをONします。このようにして破損部のLEDをバイパスすることで残りのLEDを点灯できるようにしました。
  • システム図(断線時)
    システム図(断線時)

点灯スイッチの被水時の誤点灯防止

二輪車は点灯スイッチが雨などにより被水しやすい環境にあります。LEDは微小電流でも点灯するため、点灯スイッチが被水した際の漏れ電流による誤点灯を防止しなければなりません。

→点灯スイッチを用いてHi側LEDの両端を短絡し、確実に消灯させるシステムとしました。

  • 点灯スイッチ使用方法
    点灯スイッチ使用方法

期待される効果・今後の取組み 等

専用LEDドライバを追加せずにREG/RECTの変更のみで小型二輪車用の高品質かつ廉価なLED H/L点灯システムを実現しました。これにより小型二輪車のLED H/L化を促進することができます。
今後も環境規制や商品性魅力向上といった変化に適応できる最適な充電・点灯ソリューションを提案していきます。

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