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脱炭素が抱える課題とは?実現すべき理由・現状の取り組みも解説!

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「脱炭素」「省エネ」と毎日当たり前のように耳にしますが、なぜそういわれるようになったのでしょうか。そして、脱炭素が進まないのはなぜなのでしょうか。 

脱炭素は地球温暖化を招く温室効果ガスを減らす取り組みで、日本は2050年を目途に「温室効果ガスの排出実質ゼロ」を目指していますが、多くの課題があり今のままでは厳しいのが現状です。 

そこでこの記事では、脱炭素の重要性と課題、実現に向けた取り組みについて解説していきます。 

【目次】

1.脱炭素とは?なぜ実現する必要がある?

脱炭素とは地球温暖化の原因となる温室効果ガスの排出量「実質ゼロ」を目指す取り組みです。温室効果ガスには二酸化炭素(CO2)の他に、メタン、一酸化二窒素、フロン類なども含まれますが、排出量の9割以上を占めるCO2への対策が主となるため「脱炭素」と呼ばれています。 

実質ゼロというのは排出量を完全にゼロにするのではなく、資源の再利用や植林などでCO2排出量の削減と回収を同時に行ってプラスマイナス0にしていく考え方で、「カーボンニュートラル」という言葉も使われます。 

地球温暖化の影響による異常気象や海面上昇、水害や山火事といった問題は日々深刻さを増していますが、世界の平均気温の上昇率を産業革命前の2℃以下に抑えなければ、深刻な災害が頻発するようになり人間が住むのは難しくなるとまでいわれています。 

それが発表された2015年のパリ協定「国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)」以降、世界は低炭素社会から脱炭素社会へと変わり、日本もさらに排出量を抑えるために本格的な対策に乗り出し始めたのです。 

2.日本のCO2排出量の内訳

日本の2020年度の温室効果ガス排出量11億5,000万トン(CO2換算)のうち、84.1%がエネルギー起源によるものです。脱炭素社会を目指すには、どこでどのくらいのエネルギーが消費されているか知り、それぞれにあった対策を練らなくてはなりません。 

  • エネルギー起源CO2排出量の部門別内訳

<エネルギー起源CO2排出量の部門別内訳>

※発電及び熱発生に伴うエネルギー起源のCO2排出量を電力及び熱の消費量に応じて、消費者側の各部門に配分した排出量 
参考:環境省2020年度(令和2年度)温室効果ガス排出量(確報値)について「エネルギー起源CO2排出量の部門別内訳」

CO2排出量は産業部門が1位、次いで運輸、業務その他(小売・医療・サービス業など)となっていますが、家庭も運輸とほぼ変わらない量のCO2を排出していることが分かります。

3.脱炭素が抱える現状の課題

日本のCO2排出量は2014年度以降減り続けていますが、目標には遠くおよびません。脱炭素化が抱える課題をみてみましょう

鉄鋼業の脱炭素化

CO2排出量1位の産業部門では日本の一大産業である鉄鋼業が約4割を占めます。製造時に鉄を溶かす高温が欠かせず、石炭を使用するため温室効果ガスの排出量は膨大にならざるを得ません。水素をエネルギー源にする研究なども進められていますが、実用化には数十年はかかるようです。

運送業の脱炭素化

CO2排出量の約2割を占める運送部門は、旅客輸送56%、貨物運輸44%という内訳で、燃料を化石燃料に依存しているのが課題となっています。電気自動車の推進やガソリン車の販売規制、持続可能な航空燃料の国産化、などが進められていますが、排出量を大きく抑えるほどにはまだ至っていません。

省エネなライフスタイルの浸透

私たち一人ひとりが大きく関わっているのは、排出量の約2割を占める家庭部門です。家庭から排出されるCO2の65%は電力で、そのうち約5割を照明や家電で消費しています。約2割を占める暖房器具や給湯器は命を守るため仕方ない部分ですが、個人の努力で削減できる余地がまだ多く残っています。

化石燃料依存からの脱却

2021年時点の日本の発電は約7割が火力発電であり、その原料は石炭・液化天然ガス(LNG)・石油といった化石燃料です。温室効果ガスの排出量が少ない再生可能エネルギーへの切り替えが進められていますが、火力に変われるほどの供給量や価格の安定感をすぐに実現するのは難しい状態です。

原子力発電も2011年の東日本大震災以降、安全性への不安から支持を得られず5.9%の稼働率にとどまっています。

4.脱炭素社会実現に向けた取り組み

様々な課題がある中で、日本は脱炭素社会の実現に向けて着実に動き出しています。代表的な取り組みをご紹介します。

カーボンプライシングの導入

カーボンプライシングはCO2の排出量に価格を付け、経済的に制限を促す手法です。政府主導の代表的な施策には以下のようなものがあります。

施 策 内 容
炭素税

排出量(燃料や電気の利用)に比例して課税される。

※日本ではCO2排出量1tあたり289円の温対税の他、エネルギー税制が加わる。
国内排出量取引 企業ごとにCO2排出量に上限を設け、排出量に余裕があれば売却、超過しそうなら購入するなど、企業間で排出枠の取引が可能。※上限規制あり
炭素国境調整措置 輸出入品の製造過程で発生したCO2排出量を事業者が負担する。課税や免税で調整される

エネルギーミックスの実現

エネルギーミックスとは「3E+Sの両立」をベースに、複数の発電方法を組み合わせる供給方法です。3E+Sは以下の4つを意味します。

・エネルギー安定供給(Energy Security)
・経済性向上(Economic Efficiency)
・環境(Environment)
・安全性(Safety)

例えば、安定性が高い火力発電で補助しながらクリーンな再生可能エネルギーを増やしていくなど、各発電方法を組み合わせて供給することで互いのデメリットを補い合いながらCO2排出量を削減しています。

ゼロカーボンシティの普及

「2050年までにCO2排出量実質ゼロ」を目指す地方公共団体をゼロカーボンシティと呼びます。2021年8月時点で444の自治体が参加を表明しており、1億1140万人が暮らす地域が対象になります。

温室効果ガスの排出量の把握や脱炭素化に向けた長期目標の設定の他、EVバスの導入や住宅用太陽光パネルの促進など各地域の特性に根差した取り組みを行っています。

革新的な技術の開発

脱炭素社会の実現には産業分野の技術革新が欠かせません。2020年1月に「革新的環境イノベーション戦略」策定され、課題解決に向けた開発が精力的に行われています。

具体例としては、化学資源依存から脱却するプラスチックの高度資源循環技術や金属の高効率リサイクル技術の開発、物流分野の排出量削減のための電気自動車拡大に向けた高性能蓄電池の開発などです。

二国間クレジット制度の実施

二国間クレジット制度とは先進国と発展途上国などが協力し、CO2削減の成果を分け合う制度です。

例えば、日本からは脱炭素に役立つ技術の提供を行い、途上国はCO2削減目標が達成できたときに日本の貢献を温室効果ガス排出量削減の「クレジット」として渡します。日本は、そのクレジットで自国の排出削減目標を補うことができます。

国内でのCO2削減以外でも評価される仕組みがあることで、技術力に乏しい途上国も対策が可能になり地球規模での脱炭素化が進む仕組みです。

5.まとめ

脱炭素とは地球温暖化を止めるために温出効果ガスの排出量を実質ゼロにする取り組みです。2015年のパリ協定でこのままでは人間が住めなくなるほど深刻な温暖化の現状が報告され、各国が脱炭素社会実現向けて動き始めました。

日本では産業の大部分を占める鉄鋼・運送部門の排出量、火力発電の化石燃料への依存、家庭の電力の使い方などが大きな課題となっています。

政府や各企業は脱炭素社会の実現に向けて、排出量を抑制する施策や技術革新など様々な施策を打っています。私たち一人ひとりも意識を変えて取り組んでいきましょう。


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