EV充電器の種類と公共用充電器の選び方

2022年6月掲載

EV充電器を設置して、施設への集客やブランディングを促進したいと考える事業者もいるのではないでしょうか。充電器の種類は多く、設置を決定したものの選定に迷うケースは多いようです。

「楽しいはずの家族旅行が充電ストレスで台無しに!?」

EVユーザーの期待からずれた充電スポットを設営すると、「結局利用されなかった」、「かえってゲストの不満を招いた」なんてことにもなりません。
この記事では、EV充電器の種類と選び方について詳しく解説します。知識を身につけ、ユーザーの充電目的と設置施設に合ったEV充電器を選びましょう。

【目次】

1.EV充電器は「普通」「急速」の2種類に分けられる

EV充電器は充電速度や仕組みにより、「普通充電器」と「急速充電器」の2種類に大別できます。まずは、それぞれの特徴と設置するメリット・デメリットについて確認しましょう。

EV充電器の種類
先ほど述べた通り、EV充電器は一般的に「普通充電器」「急速充電器」の2つに分けられます。普通充電器の出力は約3~6kWです。40kWhバッテリのEVの場合、フル充電まで3kWの充電器で約16時間、6kWの充電器で約8時間かかるため、駐車場や事務所、宿泊施設など、停車時間が長い施設に主に設置されます。
一方、急速充電器は出力が約50kW~と大きく、同じ40kWhバッテリのEVでも約40分で80%近くまで充電が可能です。高速道路のサービスエリアやコンビニ、カーディーラーなど、滞在時間が短い施設には「出先で素早く充電したい」という利用者が多く、急速充電器が向いています。

それぞれのメリット・デメリット
普通充電器と急速充電器には、それぞれどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか?
普通充電器は、受電した交流電圧をそのまま車両に出力するため、直流変換器が不要で小型です。限られたスペースでも複数台の設置を検討しやすく、導入コストも抑えられます。充電時間が長い側面もありますが、その分利用者の滞在時間の増加が期待できるでしょう。
一方、急速充電器は交流電圧を直流変換して電力供給する仕組みです。高電圧・大出力で電流を流せるため、普通充電器よりもはるかに短い時間で充電できます。普通充電器より大型なので設置スペースの確保が必要で、導入コストが高くなりますが、利用者の多い施設で広く採用されています。

当社では、公共スペースでの利用も可能なEV充電器を幅広くラインナップしています。普通充電器・急速充電器、国内最大級の出力容量となる90kW・150kWクラスのマルチアウトレット急速充電器まで、さまざまなEV充電器をご覧いただけます。

2.EV急速充電器の4つの規格

急速充電器の主な規格として、以下の4つがあげられます。

①CHAdeMO(日本)
②GB/T(中国)
③CCS(欧米)
④スーパーチャージャー

CHAdeMOは世界に先行して普及した国際規格で、日本の充電スポットのほとんどがCHAdeMO方式、主要日本メーカーのEVも基本的にCHAdeMOに対応しています。
世界の充電規格と比べて高出力化に課題がありましたが、現在では90kW、150kW出力の急速充電器も登場しています。急速充電器を検討される場合は、特別な事情がない限り、CHAdeMO方式の充電器を選ぶといいでしょう。

3.公共用EV充電器を選ぶときのポイント

実際にEV充電器を設置するにあたり、考慮すべきポイントは他にもあります。利用者の利便性にもつながりますので、くわしく見ていきましょう。

まずは出力容量を確認する
最初に確認したいのが、充電器の出力容量です。利用されるシーンを想定し、最適な充電器を選びましょう

目的地充電
長時間滞在するレジャー施設や宿泊施設には、3~6kW程度のポール型普通充電器の設置が喜ばれます。より低出力・低コストのコンセント型もありますが、コンセントからの変換コネクタをユーザーが持参しなければならず、多少の不便さがあります。コネクタの規格「J1772」、普通充電規格「Mode3」に対応した普通充電器であれば、充電用コネクタを車に差し込むだけですぐに充電でき、便利です。宿泊施設などではホスピタリティの向上にもつながります。

経路充電|市街地など
市街地や一般道に位置する店舗には、最大出力50kWの急速充電器が適しています。休憩時間30分での充電と仮定すると、50kWの急速充電器で約100kmの走行距離を充電回復できます。市街地では平均車速が50km/h以下の場合が多く、3時間に1回の充電利用で済むことになります。普通充電器よりは大型ですが、設置性の高いモデルもあり、店舗にも導入しやすいでしょう。

経路充電|高速道路や幹線国道など
長距離ドライブに利用される高速道路や幹線国道では、90kW以上の大出力急速充電器の導入が理想的です。30分の立ち寄りを想定すると、90kW充電器であれば約200kmの走行距離を回復できるため、長距離ドライブにおける実用性を考えると最低限の性能といえます。さらに大出力な150kW充電器であれば、15分の充電で約200kmを回復でき、より自由で実用的なEV運用が可能になります。

設置台数は利用人数・繁忙期を考慮する
充電器の種類とあわせて検討したいのが、設置台数です。
普通充電器はEVユーザーだけでなくPHVユーザーも利用するため、駐車台数の20~30%程度を目安に設置台数を決めましょう。特に利用人数が多い施設や繁忙期のある施設は、利用できないユーザーの不満につながるため、複数台の設置が重要です。
また、急速充電器が想定される経路充電では、充電待ちの渋滞が発生するとドライバーにストレスを与え、周辺施設や道路にも迷惑がかかってしまいます。中でも公共性の高い施設においては、複数の急速充電器を設置することを推奨します。

実績のあるメーカーから選ぶ
実績のある信頼性の高い充電器メーカーから採用しましょう。
充電器とEVの互換性に不具合が見られるケースが増えており、例えば、CHAdeMO規格の充電器でもCHAdeMO規格対応のEVを充電できない、充電エラーが出る事例が報告されています。
充電のために停車し、コネクタを車に差し込んでからエラーになると、ユーザーの不満が高まります。見積もりを取る際に、実績が多いメーカーかもあわせて確認すると安心です。

メーカーの対応を確認する
問い合わせをした時、見積りを依頼した時の担当者の対応が丁寧なメーカー、トラブル時のサポート体制がしっかりしているメーカーから選ぶことも大切です。
充電器が何らかの理由で故障した場合、利用者が困る事態になり、その後の利用率が下がる原因になります。エリア内で充電スポットが数少ない場合は、よりスピーディーな対応が求められます。購入後や緊急時のサポート体制、メンテナンスにかかる費用・日数についても事前に確認することを推奨します。

【重要】電力契約は「低圧受電」が割安。しかし本当にソレで良い?

EV充電設備の出力合計が50kW以下の場合は、「低圧受電」と呼ばれる比較的安価な基本料金での受電契約が可能です。一方で、出力合計が50kWを超える場合は、「高圧受電」と呼ばれる受電契約が必要になり、基本料金や受電設備などが高額になります。
小規模な施設であれば50kW以下の「低圧受電」に収まる充電設備にした方が、費用負担が少なくなります。普通充電器の複数台設置においても、50kW以下の範囲で台数を検討すると良いでしょう。
ただし、導入費用を安く抑えることだけに注視してしまうと、EVユーザーにとって不便な充電スポットになってしまう可能性もあります。「低圧受電か?高圧受電か?」で決めるのではなく、EVユーザーにとってのメリットを最大限に考慮することが重要です。
例えば、観光地などの帰宅渋滞が見込まれる地域では、十分な充電ポート数を確保した急速充電スポットが本来必要です。お土産店や軽食店、コイン式の掃除機などを併設することで、快適性と収益性を両立させる工夫も、充電スポット設営者に求められる重要な観点です。
低圧受電に収めることに拘ってしまうと、充電渋滞などにより交通状況の悪化やゲストの不満を招く結果になりかねません。充電スポット構築において抑えるべき重要なポイントです。

4.まとめ

EV充電器の種類は、「普通充電器」「急速充電器」の大きく2つです。

普通充電器 急速充電器
出力 3~6kW 50~150kW
メリット ・小型
・導入コストが低い
・短時間で給電可能
デメリット ・給電速度が緩やか ・比較的大型
・導入コストが高い
想定利用シーン 長時間滞在する場所
・レジャー施設
・事務所
・宿泊施設
停車時間が短い場所
・市街地や一般道に位置する店舗
・サービスエリア

充電器を選定する際は、広く普及しているCHAdeMO規格のモデルから選ぶことがおすすめです。他にも、ニーズに合わせた設置台数の検討や、電気容量の確認も忘れてはいけません。
種類ごとの特徴を押さえ、ユーザーにとって利便性の高い充電器を選びましょう。

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