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脱炭素で自動車はどう変わる?EVの仕組みと現状、ガソリン車の今後

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脱炭素社会を実現するためには、自動車の在り方を大きく変える必要があるといわれています。今後どのように変化を遂げていくのか、気になっている方も多いのではないでしょうか。

自動車から排出される温室効果ガスを減らす最も有力な方法が、ガソリン車から電気自動車への切り替えです。電気自動車であれば、走行時はもちろん、充電用電力の発電時や製造廃棄時を含めたCO2排出量が、ガソリン車の半分になるという報告もあります。

そこで今回は、脱炭素化に向けた自動車の変化や電気自動車で脱炭素社会が実現できる理由、今後のガソリン車の動向を解説します。

1.脱炭素化で自動車が大きく変わる理由

ここではなぜ脱炭素化によって自動車が大きく変化するのか3つの視点から解説します。

自動車が排出するCO2量は非常に多い

現状のガソリン車は多くのCO2を排出するので、脱炭素への取り組みとして自動車の改革は避けて通れません。

国土交通省の「2020年度温室効果ガス排出量(確報値)概要」によると、自動車や船舶といった「運輸部門」が排出するCO2は、日本全体の2割弱を占めています。これは最も割合の大きい「産業部門」に次ぐ多さです。


さらに運輸部門の内訳を見ると、9割近くが自動車の排出になっています。これらのデータからも、自動車の脱炭素化が必要だといえるでしょう。

2035年には全ての新車販売が電動車になる

CO2の排出量を抑えられる電気自動車の活用は、脱炭素を目指すのに不可欠といわれています。政府は「2050年までに温室効果ガスの排出をゼロにする」ために、「2035年までに全ての新車販売を電動車にする方針」を決定しました。

自動車の保有台数が全国2位の東京都は、国の示した2035年よりも5年早い、2030年までに新車販売を全て電動化する方針です。これらが実現すれば自動車によるCO2の排出は大幅に抑えられるでしょう。

世界的なガソリン車販売停止の流れ

ガソリン車販売停止の流れは、国内のみならず、世界的な潮流となっています。

中国や欧米の多くの国々が、2030~2040年にかけて、ガソリン車を含む内燃機関車の販売停止・禁止の方向を示しています。今後ガソリン車は、海外への販売ルートも限定されていくでしょう。さらに、イギリスを含む欧州では2035年にはハイブリッド車を販売禁止すると決定しています。

日本車メーカーはハイブリッド車の世界市場で高いシェア率を誇るため、この決定は日本の自動車業界に大きな打撃をもたらしかねません。今後は日本においてもガソリン車やハイブリッド車からバッテリ式電気自動車やプラグインハイブリッド自動車の製造にシフトしていくことでしょう。

2.脱炭素を可能にする電気自動車とは

自動車の脱炭素化に不可欠な電気自動車とは、一体どのようなものなのでしょうか。その仕組みやCO2削減率について解説します。

電気自動車とは

電気自動車とは、電気を主なエネルギー源として動く車です。「Electric Vehicle」の略で、EVとも呼ばれます。電気自動車は構造やエネルギー源の違いなどから、以下の4種類に分けられます。

①BEV Battery Electric Vehicle (バッテリ式)電気自動車
②HEV Hybrid Electric Vehicle ハイブリッド自動車
③PHEV Plug in Hybrid Electric Vehicle プラグインハイブリッド自動車
④FCEV Fuel Cell Electric Vehicle 燃料電池自動車


これら4種の中でも、ガソリンを全く使わずバッテリの電気のみで走る①BEV、水素と酸素で発電する④FCEVが世界の主流となりつつあります。

電気自動車のCO2削減率

電気自動車はガソリン車と比較すると、どのくらいCO2排出量を削減できるのでしょうか。

環境省の「自動車による排出量のバウンダリに係る論点について」によると、2020年のガソリン車の走行時のGHG(温室効果ガス)排出量が39.3tCO2eに対し、電気自動車は0.0tCO2eとなっています。これは東京ドーム1個分を占める森林が1年間に吸収する量とほとんど同じです。

走行時だけでなく燃料精製時や製造廃棄時も含めた「ライフサイクルアセスメント(LCA)」においても、ガソリン車のGHG排出量が1台当たり60.3tCO2eに対し、電気自動車は半分以下の29.8tCO2eです。

3.脱炭素を目指す電気自動車の現状

一般社団法人日本自動車販売協会連合会によると、国内における電気自動車の販売台数の割合は2022年10月時点で約1.1%となっています。

一方で、アメリカでは約2.9%、ヨーロッパの主要18カ国では約11%、中国では約13%と、海外では日本よりも電気自動車の普及が進んでいる国も多いようです。

日本で電気自動車の普及率が上がらない主な原因は、車体価格の高さや充電インフラ整備の遅れ、航続距離の短さにあるとされています。しかし、電気自動車の技術はほとんど実用レベルに達しており、価格の問題も解消されつつあるのも現実です。

電気自動車が普及しない背景には、私たちが上手く活用できていないという問題もあるのかもしれません。

例えば、用事や休憩の際にこまめに充電することで燃料補充に時間を割かなくて済む、電気料金の安い深夜に充電することで昼間に生活用の電気として利用できるなど、電気自動車ならではの使い方が出来れば十分に恩恵を受けられます。

ガソリン車と同じ運用方法にこだわらず電気自動車の特性を活かした乗り方を身に着けていく必要があるでしょう。

4.ガソリン車は今後どうなる?

今後、地球環境への関心が高まり、EV化が促進するのは間違いありません。ガソリン車にはいつまで乗れるのでしょうか。

2022年10月時点では、ガソリン車の所有制限に関する発表はされていません。よって2035年以降も中古車であればガソリン車の購入ができ、継続して乗り続けられると予想できます。

ただし、脱炭素化の動きは今後さらに加速していくでしょう。例えば、「環境負荷の大きい自動車に対する重課」として、ガソリン車の自動車税や自動車重量税が高く設定されることも考えられます。

また、ガソリン車の生産量が減るにつれ、ガソリンスタンドも減少するでしょう。今後ガソリン車を維持するのは難しくなるかもしれません。

5.まとめ

脱炭素への取り組みとしてCO2排出量の多い自動車の改革は避けて通れません。中でも、大きな役割を担うとされているのが電気自動車です。電気自動車はガソリン車と比べてCO2の排出をかなり抑えることができます。

しかし、日本の電気自動車の普及率は海外諸国に後れを取っているのが現状です。電気自動車を普及させるためには、車体価格の高さや充電インフラ整備といった技術的な問題に加えて、電気自動車の運用方法に慣れる必要があるでしょう。

今後はますます脱炭素化が進むと考えられており、将来的にガソリン車を維持するのは難しくなるかもしれません。今のうちに電気自動車について知識を深めておくのがおすすめです。

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