EV4種類の違いと基礎知識【BEV・HEV・PHEV・FCEV】

2022年6月掲載

環境に優しいエコカーとして「EV(電気自動車)」が普及し始めています。車の買い替えにあたり、購入を検討している方や、どんな種類があるのか気になっている方も多いでしょう。この記事では、まず基礎知識として「EV」という言葉の定義、ガソリン車との違いなどを解説します。そしてEVを「BEV」「HEV」「PHEV」「FCEV」の4種類に分けて詳しくみていきます。

それぞれにメリット・デメリットがあるので、自分に合うEV選びの参考にしてみてください。

【目次】

1.EVの定義と種類

EVとは「Electric Vehicle」の略で、「電動車」を表します。日常会話などでEVというと「電気のみを使って走る車」がイメージされますが、本来は電気を使って走る車すべてを指す単語です。総称として「xEV」という言葉もよく用いられています。

EVには大きく分けて、次の4種類があります。

①BEV:(バッテリ式)電気自動車
②HEV:ハイブリッド自動車
③PHEV:プラグインハイブリッド自動車
④FCEV:燃料電池自動車

電気のみを使って走るBEVは一般的にEVと表されますが、広い意味でのEV(xEV)と区別したい時は、動力源であるバッテリの「B」を頭に付けてBEVと表記するケースが多いようです。HEV、PHEV、FCEVはHV、PHV、FCVといったように「E」を抜いた呼称が一般的ですが、「E(=Electric)」を加えることで電気モータの使用を強調した呼び方も普及し始めています。

EV(xEV) ①BEV Battery Electric Vehicle (バッテリ式)電気自動車
②HEV Hybrid Electric Vehicle ハイブリッド自動車
③PHEV Plug in Hybrid Electric Vehicle プラグインハイブリッド自動車
④FCEV Fuel Cell Electric Vehicle 燃料電池自動車

次章から、4種類のEVについて、それぞれ詳しく見ていきましょう。

2.BEV:(バッテリ式)電動自動車

BEVとは「Battery Electric Vehicle」の略で、ガソリンを使わず電気のみを使って走る車で、エンジンがないのが特徴です。バッテリに充電した電力でモータを動かして走行します。BEVはガソリン車と違って走行中に二酸化炭素を排出しないため、環境に優しいエコカーとして近年世界的に普及し始めています。

維持費の安さもBEVの大きなメリットのひとつです。ほかのEVやガソリン車に比べて航続可能距離が短く、こまめな充電が必要にはなりますが、同じ走行距離ではガソリン代より電気代の方が安いケースがほとんどです。
40kWhのバッテリの場合、自宅充電(3kwの普通充電器)では約16時間、ディーラーなどに設置されている急速充電器では約40分で80%近くまで充電ができます。自宅充電の場合、時間はかかりますが夜間電力の活用でランニングコストをさらに抑えられます。

一般社団法人日本自動車販売協会連合会が公開しているデータでは、2022年の新車販売台数でBEVが占める割合は1月0.9%、2月1.2%、3月1.5%と推移しており、約1%前後にとどまっているのが現状です。

政府は温暖化対策として、この割合を2030年までに20~30%※まで引き上げる目標をたてており、減税・免税や補助金制度を拡充し、充電インフラ整備にも補助金を出して推進しています。BEVの課題である車両価格が高さや長距離ドライブ時の不便さなども解消されていくことでしょう。
※PHEVを含む目標数。2022年4月のPHEV新車販売台数の割合は1.5%

3.HEV:ハイブリッド自動車

HEVとは「Hybrid Electric Vehicle」の略。“ハイブリッド”の名の通り、ガソリンで動くエンジンと電気で動くモータ、2つの動力を備えている自動車です。HEVのモータはエンジンが発電したエネルギーを利用するため外部電力がいりません。

HEVは電力だけでも走行できる「ストロングハイブリッド」と、モータでエンジンをアシストする「マイルドハイブリッド」の2種類に大きく分けられます。

システム 方式 概要
HEV ストロングハイブリッド シリーズ エンジンで発電した電力でモータを駆動させる方式
スプリット エンジンとモータを使い分ける方式
マイルドハイブリッド パラレル 発進時や加速時にモータがエンジンをサポートする方式

ストロングハイブリッドは、エンジンを切ってもモータ(電力)だけで走行できる自動車です。一方、マイルドハイブリッドはエンジン走行を基本として、発進や加速時などにモータを使ってエンジン出力を抑える仕組みです。そこからさらに、エンジンとモータの利用方法によって「シリーズ」「スプリット」「パラレル」という3つの動力方式に分けられます。

シリーズ方式は、エンジンはバッテリへの蓄電のみに使い、走行自体は完全にモータで行う形で、BEVと同じ加速感や乗り心地を実現しています。

スプリット方式は、エンジンとモータの使用割合を走行状態によって適切に分割(スプリット)します。発進時や低速時はモータのみで走行し、高速時にはエンジンも稼働させるシステムです。

パラレル方式では、走行はエンジンが主体でモータはサポートに徹します。エネルギー消費が大きい発進や加速時にモータが同時稼働することで燃費効率を助ける仕組みです。コストが抑えられるため、近年は低価格な軽自動車への採用が増えています。

4.PHEV:プラグインハイブリッド自動車

PHEV は「Plug-in Hybrid Electric Vehicle」の略称。エンジンとモータ、2つの動力が備わっているのはHEVと同じですが、HEVとは違って外部電源が利用できるのが大きな特徴です。コンセントにプラグを指すことから「プラグイン」と名づけられました。

PHEVはエンジンによる発電だけでなく、充電スタンドなどの外部電源も使用可能なうえ、バッテリも1kWh前後が多いHEVに比べ10~20kWh前後という大容量。電気だけで走れる距離を大幅に長くした次世代エコカーです。万が一、充電が切れてもガソリンによるエンジン走行ができる能力は、電気自動車への不安を大きく払拭するものでしょう。

充電方法にはBEVと同様に「普通充電」と「急速充電」がありますが、PHEVの場合、急速充電に対応していない車種も少なくありません。特に輸入車はほとんどが急速充電に非対応になるため、急速充電を考えているのであれば国産車から充電方法を確認して選ぶのがいいでしょう。

ちなみに、PHEV にはEREV(レンジエクステンダー自動車)という、モータ走行の航行距離を延ばすために作られた車もあります。補助動力装置(発電専用エンジン)を搭載しているのが特徴です。エンジンは発電してモータを動かす小型発電機として用意されており、バッテリを利用したモータ走行が主体となる作りになっています。

充電スタンドがなくてもガソリンを電力源とできるため、不安なくロングドライブを楽しみたいという方は検討してみてもいいかもしれません。

5.FCEV:燃料電池自動車

FCEV は「Fuel Cell Electric Vehicle」の略称です。他のEVとは違い、水素を燃料とするEVで、水素と酸素で電気を発生させる「燃料電池」が搭載されています。ガソリンを一切使用せずモータで走行するため、生み出すのは電気と水のみ、二酸化炭素を出さない環境性能が一番の特徴です。

また、ガソリン車と同程度の走行距離を実現しながら、1回の燃料充填にかかる時間は平均約3分。他のEVでは、普通充電器でゼロからフル充電するために何時間も必要であることを考えると、これは大きなメリットといえるでしょう。

本体価格が他のEVやガソリン車よりもまだ高額である、燃料補給源である水素ステーションの整備に時間がかかるといった課題もあげられますが、主要な日本の自動車メーカーが特に開発へ力を注いでいるEVでもあります。

6.まとめ

EVにはBEV・HEV・PHEV・FCEVという4つの種類があり、ガソリンと電力の利用方法、エンジンとモータという動力の方式によって特徴が分かれています。

■BEV(バッテリ式電動自動車)は、エンジンがなく外部電源によるバッテリ充電でモータ走行します。

■HEV(ハイブリッド式自動車)は、エンジンとモータの両方を備え、エンジンで発電してモータを動かします。エンジンとモータの使い分け方にいくつかの方式があります。

■PHEV(プラグインハイブリッド自動車)は、エンジンとモータの両方を備えつつ、外部電源も使用できるのが特徴です。HEVよりもモータ走行時間が長く取れます。

■FCEV(燃料電池自動車)は、ガソリンも電源も不要の、水素を燃料とする電気自動車です。エンジンは水素と酸素から発電するためにあり、モータで走行します。

それぞれに航行距離、充電時間、インフラ、車体価格などのメリット・デメリットがあるので、十分に検討してライフスタイルにあったEVを選びましょう。

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