シリコンリミット
ドリフト層以外の抵抗が限りなく0に近づいたとしても、ドリフト層に残る抵抗値によって「これ以上ON抵抗は下がらない」という限界値があり、これをシリコンリミット(理論限界)といいます。
プレーナMOSFETのON抵抗は、耐圧の2.5乗に比例するといわれています。
耐圧2倍 ⇒ ON抵抗5.6倍
耐圧10倍 ⇒ ON抵抗316倍
低耐圧MOSFETはまだ理論限界までやれることがありそうですが、高耐圧MOSFETはかなり前からほぼ限界に達しており、新たなブレークスルーが求められていました。
⇒Siを使いながらこの理論限界を超えるための新たな技術がスーパージャンクション構造です。
スーパージャンクション構造によるオン抵抗低減効果
*SJ-MOSはシリコンリミットを超えています
スーパージャンクションの原理
従来構造のMOSFET
印加した電圧に応じて空乏層が広がっていき、これが耐圧を出しています。
空乏層の広がり=空乏層の厚み なので、高耐圧MOSFETではドリフト層の不純物濃度を上げることができません。そのため、高耐圧になるほどドリフト層の抵抗が大きく、ON抵抗が大きくなってしまいます。
スーパージャンクション構造のMOSFET
ドリフト層にN層とP層が縦溝構造に並んでおり、電圧を印加すると空乏層が横方向に広がって、やがて一体化して「溝の深さ分」の空乏層を形成します。
溝の間隔の半分だけ空乏層が広がるだけで、溝の深さ分の厚みの空乏層が得られます。空乏層の広がりは小さくてよいので、ドリフト層の不純物濃度を5倍程度に上げることができるため、ON抵抗を小さくすることができます。
この原理から、溝や溝の間隔はできるだけ細く、できるだけ深くすることが効果的であることが分かります。従来のMOSFETとは異なるメカニズムで耐圧を稼ぐので、いわゆるシリコンリミットを超える性能を出すことができます。
製造方法で見る違い
従来構造のMOSFET
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- ①N-ウエーハに酸化膜を付ける
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- ②ボロンなどの不純物を表面に付ける
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- ③熱処理して拡散。じわじわっと拡がる。
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- ④レジストを付ける
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- ⑤リンなどの不純物を表面に付ける
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- ⑥熱処理して拡散
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- ⑦レジストを除去
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一般にはこのように作るので、P層を縦方向だけに深く拡散することは困難です
スーパージャンクション構造のMOSFET
近年、N-層に深い溝を掘って溝の中にP層の結晶をエピタキシャル成長させ、深いスーパージャンクション構造を形成する方法が開発されました。
トレンチ埋戻しエピ製法
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- ①N-基板に酸化膜を付ける。
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- ②N-層にドライエッチングで深い溝を掘る。
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- ③掘った溝に再度P-層をエピ成長。
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- ④はみ出したところを削って平らにする。
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