トランジスタの種類
トランジスタは信号を増幅させたりON/OFFのスイッチをする部品です。
素子の構造や動作原理により大別すると以下のように分類されます。
各トランジスタの特徴は以下の通りです。
MOSFETとは
Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor の略
日本語にすると、「金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ」
G-S間に電圧を印加すると、D-S間が導通状態になるスイッチ素子です。理想はRon=0Ωです。
MOSFETにはNチャネル型とPチャネル型があります。
Nチャネル(N-Ch)型はS(ソース)に対してプラスの電圧をG(ゲート)に印加するとON(導通状態)になります。
Pチャネル(P-Ch)型はS(ソース)に対してマイナスの電圧をG(ゲート)に印加するとON(導通状態)になります。
N-Ch型の方が性能も良く、回路的にも使いやすいので、市場で使用されるMOSFETの大半がN-Ch型です。
MOSFETの基本特性
カタログに記載されている代表的な項目
- 絶対最大定格 (P8FE10SBK の例)
「絶対に超えてはいけない」という、使う上での制限を表したものです。条件が指定されていない場合は、25℃のときの値です。
項目 |
規格値 |
単位 |
解説 |
VDSS |
100 |
V |
耐圧 |
ID |
8 |
A |
直流で表した定格電流。パルスの場合は別途表記。 |
PT |
24 |
W |
許容損失。パッケージの熱抵抗で決まる。 |
VGSS |
±20 |
V |
ゲートの保証電圧。 |
Tch |
175 |
℃ |
チップの保証温度。ジャンクションではなく、チャネル温度。 |
- 電気的特性 (P8FE10SBK の例)
製品特有のスペックを示したものです。
重要な項目は、以下表のON抵抗と容量(キャパシタ)成分です。
どちらも小さい方が良いが、トレードオフなので、Ron×Qg やRon×Ciss で比較します。
項目 |
規格値 |
単位 |
解説 |
||
Min. |
Typ. |
Max. |
|||
RDS(ON) |
- |
79 |
99 | mΩ |
オン抵抗(Ron) |
Qg |
- | 16.5 | - | nC |
ゲートを充電するために必要な電荷。 |
Ciss |
- | 665 | - | pF | G-D間の容量とG-S間の容量を合わせたもの。 |
Crss |
- | 26 | - | pF | G-D間の容量。 |
Coss |
- | 64 | - |
pF |
D-S間の容量。 |
MOSFETの動作イメージ
OFF状態
-
- バケツにおもりがなく、しきりが下りているとき水は流れない。
ON状態
-
- バケツにおもりを入れると、しきりが上がり水が流れる。
ここで、おもり(ゲートの充電量)が足りないと、中途半端にしか「しきり」が開かない(ON抵抗が大きい)ため、水(電流)が流れにくくなります。
-
- 水路が狭い(ON抵抗が大きい)とゲートが軽い(Ciss小さい)。
-
- 水路が広い(ON抵抗が小さい)とゲートが重い(Ciss大きい)。
Cissが大きいと、ゲートを開け閉めするたびにたくさんの電荷を必要とします。
この電荷は「ゲートを充放電する電流」となるので、電力損失(駆動損失)となります。つまり、CissやQgは小さい方が良い、ということになります。
MOSFETのチップ構造のイメージ
小さなMOSFET(セル)がたくさん集まってMOSFETのチップができている。
大きなチップには、セルがたくさんある
⇒ ON抵抗が低く、定格電流が大きい。そのかわりCissが大きい。原価も高い。
すぐれたMOSFETとはどういうものか
MOSFETはチップを大きくしていけば、ON抵抗はいくらでも下がっていきます。そのかわり、CissやQgはどんどん大きくなっていきます。
-
- つまり、「ON抵抗が小さい」だけでは、「性能が良い」とはいえません。
そこで、MOSFETの性能を比較する際はFOM(Figure of Merit)といわれる「性能指数」を用いて比較します。FOMには、Ron×Ciss、Ron×Qg、Ron×Aなどがあります。
いずれも、「チップサイズのわりにON抵抗が小さい」ということを比較していることになります。
性能指数の実例
同じメーカーの、同じシリーズの、同じ耐圧のMOSFETの場合、基本的に単位セルの設計は同じです。
定格電流の違いは、チップサイズの違いによるもので、チップサイズが大きければたくさんのセルを内蔵してON抵抗を小さくすることができます。