省エネを実現する半導体|具体的なニーズについても解説
多様な電子機器・社会システムが発展したその裏で、半導体はその性能の進化を支えています。近年において、特に重視されている半導体の性能は「省エネ」であり、製品改良において省エネを実現するためには、半導体の高性能化が不可欠です。しかし、実際に「どのような半導体が省エネを実現するのか」については、詳細がよく分からないという方も多いのではないでしょうか。この記事では、省エネの実現につながる半導体について、具体的なニーズにも触れつつ解説します。
【目次】
1.省エネにおける半導体の重要性
現代において、半導体はIT・電子機器、社会システム等の省エネ化の実現に貢献する重要な存在となっています。EVを例にとると、EVの電動システムはバッテリ・モータ・インバータの3つから成り立ち、インバータに搭載されているパワー半導体には電力損失の低減と放熱性向上のための工夫が施されており、性能向上に伴い電費(EVにおける燃費)の向上が期待できます。
EVを含む新技術は、人類の生活に多大なメリットをもたらすものと期待されていますが、その一方で発電可能な電力量には限りがあることから、近年における製品開発においては「電力消費量削減」により一層注目が集まっている状況です。世界に目を向ければ、かつての新型コロナ禍における巣ごもり需要や国際情勢の変化など、人類は半導体需要の大幅な変動を現在進行形で経験しています。
情報通信量の増大に加えて、将来的にはAIに関する計算量も電力消費量を押し上げる要因の一つになることが考えられており、様々な分野・製品において半導体の省エネ化が求められています。また、電気があることで生活の利便性が高まっている一方、現代人は常に電力を消費し続けています。
いつでもどこでも、不自由なくスマートフォンでデータ送信できる環境は、24時間稼働が当たり前のデータセンターがあってこそ成立します。人類がこの便利な生活から離れることは決して簡単なことではなく、膨大になる使用電力量を半導体の力でいかに削減するかが、半導体業界における今後の課題となるでしょう。
2.省エネに貢献する半導体のニーズ
近年半導体に求められている省エネのニーズとしては、次のようなものが考えられます。
電力変換効率の向上
データセンターやネットワーク、電気自動車、産業用ロボットなど、大量の電力を消費する分野では、電力変換時のエネルギー損失を低減し機器全体の消費電力を削減するため、省エネ性能の高い半導体が求められています。
小型化と処理能力の両立
モバイル機器など、小型化・軽量化が求められる製品においては、半導体の小型化と処理能力の両立が課題となっています。具体的には、シリコンと炭素で構成されたSiC(シリコンカーバイド)やGaN(窒化ガリウム)など、シリコン以外の素材を採用した半導体、制御用半導体等へのニーズがさらに高まるものと予想されます。
再生可能エネルギーの普及
ソーラー発電電力を商用電力に使えるようにするためには、パワーコンディショナを用意しなければなりません。例えば、住宅の屋根を使ったソーラー発電においては、太陽光パネルで発電された直流の電力を家庭で消費したり、電力会社の電源系統に戻したりする上でパワーコンディショナが必要不可欠です。そして、パワーコンディショナの省エネを実現するためには、大きな電力を扱えてスイッチング損失が低いパワーMOSFETが重要な役割を担います。
高耐電圧
高耐電圧の半導体製品は、高い電圧を電源や別の回路から与えても絶縁することができるため、高電圧においても安全性・信頼性に優れた動作が期待できます。具体的には、電力変換・アプリケーションにおける安定した動作の実現につながります。
3.省エネに着目して半導体を導入するには
省エネの観点から半導体の導入を検討する場合、電力損失を小さくできるパワー半導体に注目したいところです。具体的には、次のような点に着目することをおすすめします。
半導体に用いられている材料
半導体技術の進化に伴い、これまで用いられていなかった材料が新たに採用される傾向が見られます。例えば、これまでの主な材料は「Si(シリコン・ケイ素)」でしたが、より高性能化を目指すために「SiC(炭化ケイ素)」や「窒化ガリウム(GaN)」が使用されるようになりました。これらは次世代パワー半導体とも呼ばれ、SiCは大電流・高電圧用途、GaNは高速スイッチングの特性を活かした100-1,000V程度の電源に用いられる想定です。さらに近年では、ダイヤモンド半導体の開発も進んでいます。
半導体のコスト
高性能なパワー半導体の導入コストは高い傾向にあり、導入できる分野には限りがあります。しかし、将来的にパワー半導体の市場規模が大きくなれば、規模の経済によって製造コストが下がり、その分安価に高性能な半導体を導入できるチャンスが増えるものと期待できます。よって、新製品向け半導体を導入する場合は、従来の半導体製品と比べて電力損失を削減できるものを選ぶのはもちろん、低コストかどうか検討することも重要です。
半導体関連の情報収集
自社製品にマッチするパワー半導体の情報収集を進める場合、多方面から情報を集めましょう。半導体メーカーが主催する展示会やセミナーなどがあれば積極的に参加して、どのような形で活用できそうかイメージを膨らませると、商品開発のヒントになるでしょう。また、半導体メーカーの中には、製品に関する問合せ窓口やQ&Aを設けているところもあるため、そちらで詳細を確認するのも一手です。
4.様々な事業領域で活躍する新電元の半導体
半導体は、私たちの生活や産業、車載市場、情報・通信市場など多方面で利用されており、もはや半導体のない時代の生活に戻るのは困難です。だからこそ、限りある電力を有効に活用するため、半導体の省エネ化はメーカーが追求すべき課題といえます。
新電元では、家電製品の性能向上、産業機械のモータ制御、EVの充電に用いる充電器の充実、サーバ・基地局の消費電力削減など、多方面から半導体の可能性を広げ、日夜省エネに貢献しています。
5.まとめ
様々な新技術を支える半導体には、限られた電力を有効に活用するため、省エネ機能の更なる向上が求められています。電力変換効率・小型化・寿命など、多様なニーズを満たすため、半導体業界は日々進化を続けています。製品の開発・改良にあたっては、電力損失を小さくできるような、新しい材料が用いられている半導体製品が魅力的に映るかもしれません。しかし、その分コストが高くならないよう、情報収集を徹底することが大切です。