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脱炭素への取り組みと産業機器|導入のポイントや事例についても解説

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地球温暖化の影響が深刻化する中、企業が脱炭素に配慮することは、企業規模や国籍を問わず当然のスタンスとして認識されつつあります。産業機器においても例外ではなく、化石燃料から再生可能エネルギー等への燃料転換が進むなど、業種を問わず新たな動きが見られます。

その一方で、脱炭素に配慮した機器の導入につき、コストや性能の面から社内の意思統一が進まないケースも珍しくありません。そこで、この記事では脱炭素に配慮した産業機器を導入する際のポイントについて、具体的な事例に触れつつ解説します。

【目次】

1.脱炭素における課題と産業機器

WMO(世界気象機関)は、2023年の世界の平均気温が観測史上最も高くなるという見通しを示しました。気象庁も、2023年の日本の年平均気温・日本近海の平均海面水温が、統計開始以来最も高い値になる見込みだと発表しています。

地球温暖化が深刻になるにつれて、脱炭素化は企業の必須課題となっており、特に製造業や中小企業においては非常に大きな課題と言えるでしょう。脱炭素化に向けた解決策の一つとしては、これまで多くの現場で利用されてきた「産業機器」の見直しが考えられます。

具体的には、産業ロボットや建設機械などを、既存のものから新しいものに置き換えることで脱炭素化を実現する試みが該当します。例えば、これまで化石燃料を使って動かしていた産業機器から再生可能エネルギーを使用するものに置き換えたり、モータ駆動や電力変換を省力化・効率化する半導体を採用した製品を導入したりするケースがあげられます。

もちろん、現在使用している産業機器から生まれるロスや使用電力量の抑制なども有効な選択肢となり得ますが、将来的に国内外の多くの産業機器が脱炭素型に切り替わる可能性は大きく、他社に差をつけるためには“可能な限り早い段階で取り組めるかどうか”が重要になるでしょう。

2.脱炭素向け産業機器の導入メリットと課題

脱炭素向け産業機器を導入することには様々なメリットがある反面、導入にあたっては課題も少なからず存在しています。以下、具体的なメリット・課題について解説します。

脱炭素向け産業機器を導入するメリット

企業が脱炭素向け産業機器を導入した際の最も直接的なメリットとしては、光熱費・燃料費等のランニングコスト削減があげられます。脱炭素化につながる機器開発のプロセスにおいて、非効率的な仕組みを見直す必要が生じるため、結果的にこれまでの機器よりも燃料効率が高まるものと推察されます。

金融機関等から融資を受ける際にも、選定基準の一つとして温暖化対策への取り組みが考慮されるケースは増えてきているため、円滑な資金調達を実現する上でも有利に働くことが期待できるでしょう。導入後の取り組みがメディア等で取り上げられれば、自社の知名度向上にもつながります。

脱炭素向け産業機器を導入する際の課題

自社にとって費用対効果の高いものを選んだ場合であっても、脱炭素を実現できる性能を持つ産業機器の導入時には高額なコストが発生します。基本的には、CO2削減量が大きくなるほどCO2の削減に必要な費用が増加するものと考えられ、新しいものであるほどコストにふさわしい成果が得られるかどうか不透明な部分は否めず、企業としても導入を決断しにくい部分があるでしょう。

また、新しい産業機器を導入するということは、自ずと現場で働く従業員の意識や社内体制を変革する必要性に迫られます。場合によっては、導入時に生じたコストを商品・サービスに価格転嫁せざるを得ないケースも想定しておかなければなりません。

3.脱炭素向け産業機器を導入する際のポイント

これから脱炭素につながる産業機器を新たに導入する場合、なぜ導入する必要があるのか、周囲に理解してもらえるような理由を考えることが大切です。例えば、次のような理由を説明することで、導入にあたり周囲の協力を得られる可能性が高まります。

社内でステップアップにつながるイメージを共有

脱炭素化への取り組みをサプライヤーに求める企業は増えてきており、産業機器の切り替えに成功すれば、将来的に新たな取引先等の確保につながる可能性があります。それに伴い自社の利益アップや知名度向上につながれば、従業員のモチベーションアップだけでなく、人材採用の観点からも有利になるでしょう。

現状を「見える化」

現場で使用されている産業機器すべてを脱炭素型のものに切り替えるのはコストが大きいため、多くの場合、切り替えた際のメリットが特に大きいものに絞って導入を検討すべきとされます。例えば、それぞれの現場で「現場全体に影響する設備」を改善したい場合は、装置の温度・配管の流量や圧力といった数値をセンサで測定し、その数値をもとに現状を「見える化」すると、現場を説得するのに役立ちます。

高効率モータが採用された産業機器を検討する

産業機器を含むモータによる電力消費量は、世界で使用される全電力消費量のうち40~50%、日本では約50%を占めるとされます。脱炭素に配慮して産業機器の導入を検討している場合は、使用する燃料等の要素に気を配るだけでなく、高効率モータが搭載された機器を導入することにも意識を向けましょう。高効率モータ搭載の機器を導入することで、以下のようなメリットが期待できます。

●高出力密度化(製品のダウンサイジング)
●エネルギー損失低減(銅損・鉄損の低減による効率性向上)
●モータ駆動回路側の損失低減(電力損失低減による節電効果)

なお、高効率モータについて詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。

4. 脱炭素に向けた産業機器の導入事例

世界的に温暖化対策が重視される中、日本でも全国各地で脱炭素に貢献する産業機器を導入する動きが強まっています。具体的な事例としては、次のようなものがあげられます。

●電気式から高効率GHP(ガスエンジン・ヒートポンプ空調)に切り替え、広いスペースの空調を効率化
●湿度をコントロールするデシカント設備を設置し、清掃・営繕にかかるコストを削減
●ガスボイラーとヒートポンプのハイブリッド運用により、年間CO2排出量を約38tから約25tに削減

その他、将来的な動きとして、今後は産業ロボット導入・フォークリフトの電動化なども進んでいくものと予想されます。新電元工業では、このような産業機器のモータ駆動・電力変換などに向けて、高品質なパワー半導体ソリューションを取り揃えています。

5.まとめ

地球温暖化の影響が強まるにつれ、企業にも脱炭素化に向けた取り組みが求められる中、産業機器の見直しは今後より重要性を増すものと考えられます。脱炭素に配慮した機器を導入することで、ランニングコスト削減や円滑な資金調達が期待できる一方、初期投資には相応のコストが生じるため、企業としても慎重に判断しなければなりません。スムーズに導入を進めるためには、まずは社内で導入のメリットを共有し、現状を「見える化」することが大切です。具体的な導入イメージが湧かない場合は、同業他社の事例等を当てはめて考え、自社で同様の効果が期待できるかどうか十分に検討することをおすすめします。

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