脱炭素に貢献する高効率モータ|導入時のポイントについても解説

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世界的に脱炭素への動きが進む中、様々な分野でエネルギー消費の削減に貢献する製品のニーズは高まっています。特に、数多くの電気製品に用いられている「モータ」の性能を見直すことは、脱炭素に貢献する製品開発において重要なポイントになります。具体的には、高効率モータを採用するという方法が考えられるものの、ただ高効率であるというだけでは十分な成果が得られない可能性があります。この記事では、脱炭素に貢献する高効率モータの性能や、導入時のポイントについて解説します。

【目次】

1.脱炭素化で期待される高効率モータ

昨今、様々な分野でモータが使用されるようになりました。電力を動力に変えるモータは、自動車や家電・ベルトコンベアや給排水ポンプといった産業機械など、幅広い製品に用いられています。モータが使われている自動車と聞いて、電気自動車を思い浮かべる人は多いかもしれません。しかし、一般的な自動車においても、モータは電動パワーステアリング・エアコン用コンプレッサーなどに用いられています。モータによる電力消費量は、世界で使用される全電力消費量のうち40~50%、日本では約55%を占めるとされます。

そのため、モータのエネルギー消費削減は事業等の脱炭素化・省エネに大きく貢献するものと期待されています。電力消費量が世界的に増える一方、電気を作るための資源確保は年々難しくなる傾向にあることから、高効率モータが普及することは電力不足の解消にもつながるものと考えられます。

2.モータの高効率化技術とは

高効率モータと呼ばれるモータは、開発にあたって新たな高効率化技術が取り入れられています。以下、モータの高効率化を実現する主な技術について解説します。

高出力密度化

出力密度とは、モータから生成される動力のエネルギー伝達の時間速度のことをいいます。パワーがより大きく、本体がより小さいほど、出力密度は高くなります。高出力密度を実現しているモータは、本体の小ささとパワーの大きさを両立させるため、強力なネオジムマグネットなどの高磁束密度材料を採用しています。また、磁気回路設計に関しても、高出力密度が実現するよう最適化されています。自動車など各種製品にモータを組み込むにあたり、高出力密度のモータはスペースが限られる中でも配置が可能となり、製品本体のダウンサイズにも貢献します。

エネルギー損失低減

モータが電気エネルギーを回転エネルギーに変える際、一部のエネルギーが熱に変換されてしまい、その分だけ損失が生じてしまいます。効率性を向上させるためには、この損失をどれだけ低減できるかが課題となります。解決の方向性として、新しいコイル構造の開発や低損失な素材の適用などがあげられ、これによりコイルの抵抗によって発生する損失(銅損)や、モータ内部の部品である鉄心部通過時に発生する損失(鉄損)の低減が期待できます。

モータ駆動回路側の損失低減

モータ駆動回路側の損失を低減することも、高効率化技術に含まれます。代表的なものの一つに、スイッチング損失の低減があげられます。スイッチング損失とは、スイッチング素子にON・OFF命令を出した際、OFFからON状態、ONからOFF状態に移行する際に電力損失が発生することをいいます。損失を減らし高効率を実現しているモータは、スイッチング素子として低損失のMOSFETを採用する、駆動回路におけるスイッチング周波数を最適化するなどの方法を採用しています。

3.脱炭素の観点から高効率モータを導入するポイント

高効率モータは、必ずしも「汎用性が高いモータ」のことを指すとは限りません。脱炭素の観点から自社で新しく高効率モータを導入するにあたっては、次の点について検討することが大切です。

用途に応じて選ぶ

高効率モータの主な用途としては、大きく「ファンの動力源」もしくは「機器制御の動力源」の2種類の用途が考えられます。加えて、一定の回転速度で動かすのか、精密な制御が必要になるのかによって必要なタイプのモータが変わるため、高効率であることだけを理由に導入すると、かえって不要なコストが発生する恐れがあるため注意しましょう。

多方面から性能を確認する

高効率モータを選ぶ際は、高出力密度・エネルギー損失低減という観点だけでなく、モータ自体は大き過ぎない(小さ過ぎない)か、必要十分なスペックかどうか、静粛性は十分かなど、実際に使用する状況を想定して多方面から性能を確認することが大切です。高効率モータは総じて回転数が高くなる傾向にあり、使い方によっては消費電力が増加する恐れもあるため、例えばポンプならインペラカットなど負荷低減の対策を講じた方が良い場合もあります。

各種規制に対応したものを選ぶ

日本国内における「トップランナー制度」や、国際電気標準化機構(IEC)が定義するモータの効率等級など、モータの効率にもランクが存在します。一般的に、IECの効率等級においてトップランナー規制効率相当とされるのは「IE3」からとなっており、将来にわたり使用し続けることを考えると、最低限IE3以上のモータを選ぶのが望ましいでしょう。

4.モータの高効率化に対応する低耐圧MOSFET

自社製品等に新しいモータの導入を検討する際は、モータ単体での性能を追求するだけではなく、製品としての総合力を高めなければなりません。しかし、性能強化に伴い部品点数の増加が増えると省スペースが課題となるため、例えば大型のモータを駆動させる場合、そのためのインバータ回路を省スペース化することが求められます。新電元工業では、様々なニーズに対応可能な低耐圧MOSFETをご用意しております。

EETMOS®3/4series

Cuクリップ構造により低Ron・大電流化を実現

EETMOS®3series

トレンチゲート構造・トレンチレイアウトを最適化したことにより、Ron・Aを約23%低減

車載小型ファンのモータ駆動回路・各種ECU制御部用のMOSFETに関しましては、低損失パワーMOSFETを1パッケージに2素子搭載し、実装面積・部品点数の削減に貢献する「LF Dual」シリーズもご検討ください。

5. まとめ

世界で消費される全電力量のうち、約半数を占めるモータの電力消費を削減することは、自社事業の脱炭素化・省エネにつながります。高効率モータの導入が実現すれば、高出力密度化による製品本体のダウンサイジングや、エネルギー・電力損失の低減などが期待できます。実際に高効率モータを導入する際は、用途に合ったモータを選びつつ、複数の観点から性能を確認した上で導入することが大切です。インバータ回路の省スペース化を課題としている場合は、新電元工業のパワーモジュールの導入もご検討ください。

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