脱炭素とSDGsの関係性について|世界の動きや事例についても解説

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脱炭素・SDGsは、いずれも世界各国で共通の課題として認識されています。脱炭素とSDGsは、ビジネスシーン等で似たような意味合いで説明されるケースも散見されますが、本来はそれぞれまったく別の意味を持つ単語です。

企業においても脱炭素・SDGsは例外視できないテーマであり、経営者・企業担当者の中には、脱炭素とSDGsの関係性がよく分からず悩んでいる方もいるのではないでしょうか。この記事では、脱炭素とSDGsの関係性について、世界の動きや各種事例も含め解説します。

【目次】

1.混同されやすい脱炭素とSDGs

ニュースなどで脱炭素・SDGsは一括りに説明されることが多い傾向にありますが、実際にはそれぞれ意味合いが異なる単語です。以下、それぞれの意味や違いについて解説します。

脱炭素とは

脱炭素とは、二酸化炭素(CO2)排出量をゼロにすることをいいます。単純に排出量を削減するだけでなく、企業活動等で発生することが避けられない二酸化炭素を後から回収することも含まれるため、意味合いとしては「実質ゼロ」を目指す取り組みのことを指します。

SDGsとは

SDGs(Sustainable Development Goals)は、日本語に訳すと「持続可能な開発目標」となり、人類が持続可能な世界を実現するための具体的な目標のことです。2030年を達成期限として、17目標・169ターゲット(具体目標)が設けられています。

脱炭素とSDGsを混同しやすいのはなぜ?

脱炭素に比べると、SDGsの目標はより広い範囲で設定されており、例えば「1.貧困をなくそう」や「2.飢餓をゼロに」といった目標も存在しています。SDGsの中で脱炭素と直接関係する目標としては「13.気候変動に具体的な対策を」などがよく知られていますが、これらの目標達成と脱炭素に向けた取り組みが類似していることから、双方を同じような意味で理解する人が増えたものと考えられます。

2.企業活動を脱炭素・SDGsの実現につなげるポイント

脱炭素とSDGsが世界的な目標であることは理解できたものの、いざ自社の活動の中で貢献できる分野を探そうとすると、戸惑ってしまうケースも多いでしょう。以下、自社の企業活動を脱炭素とSDGsの実現につなげるためのポイントについて解説します。

解釈の幅を広げる

SDGsにおける17目標の中で、脱炭素と関連する目標としては、次のようなものがあげられます。

●7.エネルギーをみんなにそしてクリーンに
●13.気候変動に具体的な対策を
●14.海の豊かさを守ろう

これらの目標達成に向けた活動をアピールすることは、顧客や利害関係者に「直接的に目標達成に貢献している」印象を与えることにつながります。しかし、すべての企業が脱炭素・SDGs両方と関連性のある活動をしているわけではありません。

もし、直接的にSDGsと脱炭素との関連性が見つけられない場合は、解釈の幅を広げてみることをおすすめします。例えば、地元の川の環境を守りつつ小規模な水力発電所を作り自給自足・地産地消の電力を作ることは、「6.安全な水とトイレを世界中に」と「7.エネルギーをみんなにそしてクリーンに」の目標達成に貢献する可能性があります。普段から、自社の事業内容がSDGs・脱炭素にどうリンクするのかを考えることで、関連性が見えやすくなるでしょう。

強化/最小化という観点で捉える

自社の事業に関わる項目や利害関係者への影響を鑑み、脱炭素・SDGsにおいて特に重要なポイントを洗い出すのも重要なことです。例えば、慢性的な残業を解消できれば、その分稼働時間の短縮にもつながるため、自社が使うエネルギーの最小化につながるという解釈もできます。

あるいは、自社の技術を応用して二酸化炭素排出量を減らした製品を製造・販売できれば、売上の強化が期待できるでしょう。自社の強みを伸ばす、または自社の弱みを改善するという視点から、関連性を探してみましょう。

従業員の取り組みを評価する

自社の事業活動に関連する取り組みだけでなく、従業員が個別に取り組んでいることがあれば、それを評価するという方法もあります。具体的には、移動時の乗り物利用を減らす、リモートワーク主体で仕事が回るようアイデアを出し実現するなど、脱炭素・SDGsにおいて具体的な行動につながったケースを評価する方法などが考えられます。

3.脱炭素とSDGsの両立に向けた企業の取り組み

脱炭素とSDGsの両立に向けて具体的な行動を進めている企業は、様々な取り組みをアピールしています。具体的な取り組みとしては、次のようなものがあげられます。

持続可能な燃料の開発・活用

石油を中心とした化石燃料に代わり、持続可能な原料から製造される次世代燃料を使おうという動きが、様々な業界で進んでいます。一例として航空業界では、使用燃料の削減によるCO2削減から、世界的にSAF(持続可能な航空燃料)の開発促進と活用に舵を切る動きが進んでいます。

2030年には本格的に普及が進むという予想もあり、全燃料搭載量の一部をSAFに置き換えることを目標に掲げている航空会社もあります。一部の便にはすでにSAFが搭載されているケースもあり、今後の発展が期待されます。

サーキュラーエコノミー(循環経済)型事業の創出

サーキュラーエコノミーとは、これまでは経済活動において廃棄されていた製品・原材料を資源と捉え、再利用等の方法で再度循環させる経済システムを指します。例えば、排気ガスなどから回収したCO2をカルシウムに吸収させて製造するカーボンリサイクル材料と、製鉄の産業副産物である高炉スラグを用いて、新しいコンクリートを作るケースがあげられます。

より身近な事例としては、古いポリエステル衣類から新たにポリエステル樹脂を作り、それを原材料とした衣類を製造・販売する例もあります。海外では、発泡スチロールの代わりに、ココナッツの殻を加工した素材を断熱材にしたクーラーボックスが登場しています。

4.脱炭素+SDGsが新たなビジネスチャンスを生む

脱炭素とSDGsは、それぞれ独立して施策を講じることも一手ではありますが、今後は両立を意識することが経営戦略において重要になるものと推察されます。自社の事業と直接結びつけることが難しい場合であっても、脱炭素・SDGsに配慮した製品を導入することで、株主・顧客など利害関係者の評価を高めることにつながるでしょう。

新電元工業では、電子デバイス事業、電装事業、エネルギーシステム事業の分野において、使用電力量削減・二酸化炭素排出量削減を実現しています。EV充電をより簡単に使いやすくするための「見せない普通充電器」等の普及にも注力し、脱炭素社会の実現に向けて今後も尽力してまいります。

5. まとめ

脱炭素・SDGsは、厳密には異なる意味合いを持つものの、SDGsの目標の中には脱炭素と密接に関連しているものもあります。自社の企業活動が脱炭素・SDGsと直接関連するものでないとしても、解釈の幅を広げたり、自社の課題解決につなげて考えたりすることで、何らかの形で貢献できる可能性は十分あります。

すでに何らかの形で取り組みを進めている企業の事例を参考に、自社でできることを模索するのも一つの方法です。脱炭素・SDGsを両立させる施策を講じることは、今後の企業活動において不可欠なものになるものと推察されます。

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