脱炭素化とIT技術の活用について|事例や問題点についても解説

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脱炭素化を目指し、温室効果ガスの削減に向けた施策を具体的に進めていく上で、ITの活用に注目が集まっています。ITの活用によって温室効果ガスの削減が可能な領域は幅広く、取り組みのレベルこそ差は見られるものの、多くの企業で脱炭素化が進められています。システム開発の現場においても、脱炭素を意識する場面は増えるものと予想され、脱炭素経営を想定した商品・サービスを提供するIT企業も目立つようになりました。この記事では、IT技術の活用による脱炭素化について、各種事例や問題について触れつつ解説します。

【目次】

1.脱炭素におけるIT技術への期待

脱炭素とは、CO2をはじめとする代表的な温室効果ガスの排出量を「実質的にゼロ」にしようとする取り組みのことをいいます。具体的には、温室効果ガスの排出量と、植物等による吸収・除去量を“差し引きゼロ”にすることが目的です。

地球温暖化による気候変動や化石燃料の枯渇など、人類が脱炭素に向けた取り組みを進めなければならない理由は数多く存在しており、脱炭素は地球規模の重要な課題となっています。そのような中、温室効果ガスの排出量削減に向けた取り組みを促進する技術として、IT技術に注目が集まっています。

IT技術の活用によって、これまで当たり前だと考えられていた業務プロセスが大幅に効率化すれば、結果として温室効果ガスの削減につながります。

2.脱炭素化に向けたIT技術の活用例

IT技術を脱炭素化に活用するケースとしては、どのような例が考えられるのでしょうか。以下、脱炭素化に向けたIT技術の活用例をいくつかご紹介します。

リモートワークの普及促進

リモートワークは、新型コロナ禍において社員同士のウイルス感染を避けるために普及した経緯があります。しかし、新型コロナの感染症法上の位置付けが第5類へと移行し、行動制限が解除された現在、リモートワークに伴うデメリットの一つであるコミュニケーション不足を解消するために、出社を求める企業も存在します。一方で、リモートワークを続ける企業もあり、現代社会ではより柔軟な働き方が求められています。

実は、脱炭素という観点からもリモートワークは有効な施策であり、出勤のため公共交通機関や自家用車を使用するのに比べて省エネな働き方といえます。近年では5Gによるネットワークの進化によって、大容量のデータをタイムリーに送受信できるようになりました。

5Gによって、企業における大人数でのリモートアクセスが高速通信で行えるようになれば、出張時・緊急事態時であっても作業の生産性が低下しにくくなります。Web会議についても同様で、通信が重くなるリスクを考慮せずやり取りができるでしょう。

ペーパーレス

社内における決裁・FAXなど、何かと紙ベースでのやり取りが多かった日本企業ですが、電子署名やビジネスチャットツールでのやり取りに移行した企業も増えてきています。完全にペーパーレスにシフトするのが難しい場合でも、紙による請求書の発送先が減るだけで、その分紙の出力や郵送にかかるエネルギーを節約できます。

AI

AIと脱炭素の相性は良く、施設の電力データをAIにより解析して利用状況を秒単位で分析したり、工場の電力利用量を予測して必要分の再生可能エネルギーを提供したりと、応用の幅は広いものと推察されます。物流の観点からも、ルート最適化や車両の積載容量の最適化といった効率化が期待できるでしょう。

3.脱炭素化のためIT技術を導入する際の問題点

適切な形で導入できれば、脱炭素化のためIT技術を導入するメリットは大きいものと考えられます。しかし、すべての企業・組織ですぐに導入できるとは限らず、導入に時間がかかったり、導入を断念してしまったりするケースは十分考えられます。以下、脱炭素化を目的として、企業・組織で新たにIT技術を導入する際の問題点について解説します。

自社への適切な導入方法が不明瞭

脱炭素に向けて企業の事業内容・産業事態を根本から変えていく取り組みは「GX(グリーントランスフォーメーション)」と呼ばれ、IT技術の導入もまたGXの一環と捉えられます。しかし、GXはすべての企業・業界で一律に決まった内容の取り組みが求められるものではないため、具体的なソリューションの道筋を立てることが課題となります。

専門人材の掛け合わせが難しい

IT技術は、単純にソフトウェア等を導入すれば誰でも活用できるわけではなく、その分野に精通した人材が社内にいてこそ活かせるものです。同時に、ビジネスとの掛け合わせをイメージできる人材も必要になるため、必然的にチームの人員には多様性が求められます。

その結果、異なる専門分野に精通した人材同士の掛け合わせが難しくなるものと予想されます。せっかく人材を集めても、それぞれが有機的に機能しなければ、導入したIT技術を使いこなすのは厳しいでしょう。

優先順位の付け方が分からない

脱炭素を実現するにあたっては、自社が排出している温室効果ガスや電気・熱について把握し削減するだけでは足りません。原材料調達、従業員の通勤や出張、購入した製品・サービスといった“取引先すべてに関係している排出量”まで含めた削減策が求められます。

幅広い分野で削減策を講じなければならない中、脱炭素を目指してIT技術を導入するにしても、どの順番で削減を進めるべきか分からない企業も少なくありません。取り組むべき優先順位を自社スタッフだけでは決められない場合、専門家によるコンサルティングなども検討する必要があるでしょう

4.脱炭素化とIT業界の関係性

脱炭素化と聞くと、CO2など温室効果ガスの排出量をゼロにするという観点から、排出量の多い業種として鉄鋼業や化学工業などを思い浮かべる人も多いでしょう。むしろIT業界と聞くと、紙ベースでのやり取りが少なく、エコなイメージが強いかもしれません。

しかし、情報化社会においてITは急速に普及しており、IT機器・システムの電力消費量が急増する懸念もあります。また、大事なデータを取り扱うデータセンターが社会に与える影響度は年々増してきており、インターネットが一般化した現代においては、故障・停電時の社会活動及び経済活動における影響度が深刻になるものと考えられます。

データセンターの消費電力も問題視されており、ITインフラ業界においては、使用時のCO2排出量の少なさ・資源循環をアピールする動きが活発化しています。このことから、将来的にIT業界はより脱炭素化への動きを求められるものと推察されます。

新電元工業でも、常時稼働と信頼性が求められる通信インフラ向け電源装置を多数取り揃えています。

5.まとめ

IT技術は、一見脱炭素とは直接関係がない技術に思えるかもしれませんが、業務プロセス効率化などの観点から脱炭素化に貢献しています。日本でリモートワークが普及したのもIT技術の進歩が一因にあり、5Gなどネットワークの進化によって更なる発展も期待されます。

その一方で、すべての企業で円滑にIT技術を導入できるとは限らず、専門人材の掛け合わせや脱炭素に向けた優先順位の付け方などを社内で検討する必要があります。データセンターの消費電力増などを背景に、IT業界自体も脱炭素化を求められており、業種を問わず脱炭素化は重要な課題になっているものと考えられます。

 

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