脱炭素とカーボンニュートラルの違い|脱炭素社会についても解説

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脱炭素・カーボンニュートラルといった単語はよく聞くものの、それぞれの違いについてあまり詳しくないという方も多いのではないでしょうか。どちらも二酸化炭素や温室効果ガスの排出に関係しているキーワードですが、実際に意味するところは少しニュアンスが異なります。

それぞれの違いを把握することで、昨今の気候変動に関する話題について、正しく理解できるようになるでしょう。

この記事では、脱炭素とカーボンニュートラルの違いに触れつつ、脱炭素社会についても解説します。

【目次】

1.「脱炭素」とはどういう意味?

脱炭素とは、二酸化炭素(CO2)排出量をゼロにすることです。実質的に二酸化炭素の排出量がゼロになった社会は「脱炭素社会」と呼ばれます。

「実質的にゼロにする」とは、排出量を削減するのと同時に、排出が避けられない二酸化炭素を後から回収することを意味しています。

実質的にゼロにすると聞いて、それなら「完全にゼロにすべきなのではないか」と考える人もいるでしょう。しかし、日常生活や経済活動の様々な場面で二酸化炭素は排出されるため、排出を地球上から完全に止めることは難しいのが現実です。

なぜ脱炭素が注目されるのか

脱炭素が世界的に注目される理由として、二酸化炭素の増加が地球の環境に悪影響を及ぼすことがあげられます。例えば、海面上昇の主な原因は、海水の温度上昇(地球温暖化)による膨張と、氷河・氷床の融解とされます。

1901~2010年の約100年の間に海面は19cm上昇しており、フィジー諸島共和国、ツバル、マーシャル諸島共和国といった海抜の低い多くの島国では、高潮による被害が大きくなっています。海水が田畑や井戸に入ってしまうと、作物は育たず、人々は淡水を飲めなくなってしまうのです(※)。

※参考:全国地球温暖化防止推進活動センター|2-2 海面上昇の影響について(https://www.jccca.org/faq/15931

島国である日本も、地球温暖化の悪影響を受けることが予想され、生態系への影響も懸念されます。日本も含む世界中の人々が、より深刻な事態に向かうのを防ぐためには、脱炭素社会を可能な限り早期に実現することが求められます。

地球温暖化が引き起こす問題

地球温暖化によって引き起こされる問題は、海面上昇だけではありません。オーストラリアでは2019年、干ばつによる空気の乾燥・気温の高さなどが原因で記録的熱波となり、深刻な森林火災が発生しました。

逆に、気温上昇によって空気中の水蒸気の量が増え、降水量に変化が生じるケースも見られます。いわゆる「ゲリラ豪雨」のような、局地的かつ短時間の激しい豪雨も、地球温暖化が一因と考えられています。

化石燃料の枯渇リスク

人々の生活を支えている、石炭・石油・液化天然ガス等の化石燃料は、有限の資源です。タイミングについては諸説あるものの、使い続ければやがて枯渇してしまうことは疑いなく、世界的に代替エネルギーへの転換が求められています。

化石燃料が枯渇しないよう対策を講じることで、結果的に二酸化炭素排出の機会を減らすことができます。現代では、太陽光発電・風力発電・地熱発電など、化石燃料を使用しない様々な代替エネルギーの研究・運用も進んでいます。

2.「カーボンニュートラル」とはどういう意味?

カーボンニュートラルとは、二酸化炭素を含む温室効果ガスの「排出量」と「吸収量」を均衡させることです。つまり、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにすることを意味します

2015年のパリ協定

カーボンニュートラルという概念が、広く世界中で知られるようになったのは、2015年にフランス・パリで採択された「パリ協定」です。パリ協定の採択は、世界各国が「2050年までにカーボンニュートラルを実現する」という目標を掲げることにつながりました。

2050年がタイムリミットとなっている理由は、地球温暖化研究を行う国連内組織IPCC(気候変動に関する政府間パネル)が、地球の温度上昇を抑えるためには「2050年近辺まで」にカーボンニュートラルを実現する必要があると報告しているからです。 もし実現できない場合、地球が暑くなり過ぎて、人間が暮らせない場所が増える恐れがあります。

企業にも求められる配慮

政府がカーボンニュートラルへの取り組みを推進する方針を固めている以上、企業にもカーボンニュートラルへの配慮が求められます。企業が自然エネルギーの活用に携わることで、企業価値が向上し、投資家から魅力的な投資対象に映ることでしょう。

例えば、自社で太陽光発電を導入できれば、電力コストの削減につながるだけでなく、税制上も有利になります。導入時に補助を受けられるケースもあるため、取り組むメリットは大きいはずです。

3.脱炭素とカーボンニュートラルの違い

脱炭素・カーボンニュートラルの概要が理解できたところで、次はそれぞれの違いについて触れていきましょう。どちらの単語も厳密に定義されているわけではないため、この記事では、2つのキーワードが持つニュアンスの違いに注目して解説します。

それぞれの意味の違い

脱炭素社会という言葉には、これまでの二酸化炭素を排出する生活から脱却するというニュアンスが含まれており、特に「二酸化炭素の排出を実質的にゼロにする」ことを脱炭素と認識している人が多く見られます。

これに対してカーボンニュートラルは、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの排出量・吸収量をプラスマイナスゼロにすることを意味しています。よって、メタンガス・フロンガスといった他の気体もカーボンニュートラルの対象となりますし、森林等の吸収量を正確に把握することも重要になってきます。

使い分けされるケース

ここまでお伝えしてきた通り、脱炭素とカーボンニュートラルは、ニュアンスこそ違うものの似たような意味を持つ単語です。そのため、脱炭素という単語が、実質的にカーボンニュートラルと同じような使い方をされることがあります。

例えば、企業サイト等で他の言葉と組み合わせてカーボンニュートラルへの取り組みを説明する場合、あえて脱炭素という単語に置き換えているケースも見られます。逆に、温室効果ガスの排出を「完全にゼロ」にする意味合いで用いているケースもあるため、必要に応じて文脈から意味合いを判断しなければなりません。

似たような名称の用語

ビジネスニュース等で、脱炭素・カーボンニュートラルと似たような名称の単語が登場する機会も増えてきています。以下にご紹介する単語の意味を押さえておくと、脱炭素・カーボンニュートラル関連のニュースがより分かりやすくなるでしょう。

脱炭素ドミノ
脱炭素ドミノとは、脱炭素に向けた取り組みを地域が主体となって行い、その取り組みが全国的に広がっていくことをいいます。先行地域となる地域モデルケースを作り、それを全国各地に波及させるという考え方です。

カーボンプライシング
カーボンプライシングとは、二酸化炭素自体に価格を付けることにより、排出量の抑制を試みる経済的手法のことです。具体例としては、企業等が燃料・電気を使って排出した二酸化炭素に対して課税する「炭素税」や、二酸化炭素削減を一つの価値としてみなし、証書化して売買取引を行う「クレジット取引」などがあげられます。

カーボンネガティブ
カーボンネガティブとは、産業活動などで大気中に排出される温室効果ガス(二酸化炭素を含む)の排出量よりも、吸収量が上回っている状態のことをいいます。決して消極的な意味ではなく、むしろ気候課題の解決においては良い傾向といえます。

4.脱炭素・カーボンニュートラルに向けた取り組みの事例

多くの企業が、脱炭素・カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みを進めています。具体的な事例としては、以下のようなものがあげられます。

・自社で使用する電力の再生可能エネルギー化
・電気自動車への切り替え
・エンジン改善によるクリーン排気の実現

新電元グループでは、温室効果ガスの排出量削減という観点から、白物家電の電源向け低損失ブリッジダイオードの発売、自治体へのEV用急速充電器の寄贈など、様々な取り組みを行っております。

5.まとめ

脱炭素とカーボンニュートラルは、厳密には異なる意味を持つ単語ですが、いずれも地球温暖化や異常気象の問題を考える上で重要です。二酸化炭素・温室効果ガスの排出抑制に積極的な企業は、投資家の視線を集めることにつながるでしょう。

脱炭素・カーボンニュートラルの実現のためには、企業単位だけでなく、自宅での節電・節水など、個人単位で取り組めることを実践するのも大切です。エアコンを買い替える際、最新の省エネ技術が用いられている機種を購入するなど、まずは自分たちにできることから始めましょう。


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