脱炭素の新たな解決策はIC |新たな需要や重要性を解説

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半導体は、二酸化炭素を排出しないEVの動力モータ・バッテリの制御や、太陽光等の自然エネルギーによる電力を家庭用の電圧・周波数に合わせる際の制御などに活用されています。近年では、脱炭素の分野において、新たな解決策の1つとして注目を集めています。

これまでも様々な用途で利用されてきたIC(集積回路)についても、消費電力削減という観点から重要性が高まっており、日々進化を続けています。この記事では、脱炭素におけるICの新たな需要について解説します。

【目次】

1.ICとは

ICとは、英語「Integrated Circuit」の略で、日本語では集積回路と訳します。一言でまとめると、電流の通路となる回路を1枚の基板上に組み込んだものをいいます。トランジスタ・ダイオード・抵抗・コンデンサといった電気回路を作るための部品(回路素子)は、大きさ数mm~10数mmほどのシリコンの上に組み込まれ、それぞれの部品は相互に配線されています。また、IC自体が特定の機能を持った電子回路として機能します。

ICと聞いて多くの人がイメージするのは、例えばクレジットカードに埋め込まれたICチップのような形状ではないでしょうか。ICチップ付きのクレジットカードは、暗証番号入力による本人確認ができ、情報も暗号化して保存できるため、ICチップなしのクレジットカードに比べてセキュリティ面で優れているとされます。ちなみに半導体とは、電気を良く通す「導体」と、電気をほとんど通さない「絶縁体」との中間の性質を持つ物質・材料のことをいいます。ICは、半導体の一種と捉えると分かりやすいでしょう。

2.脱炭素という観点から重要なIC

脱炭素という観点からも、ICには期待が集まっています。以下、その理由について解説します。

EV等の制御や充電

電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)は、二酸化炭素を排出しない自動車として、今後、日本でも更なる普及が予想されます。実は、これらの自動車を制御するためには、ICが不可欠なのです。例えば、走行状況や操作に応じてインバータ回路内のトランジスタを動作させるためには、ゲートドライバーICを経由する必要があります。他には、EV等に搭載されるリチウムイオン電池を過充電・過放電から保護する電池監視ICも重要です。

自然エネルギーによる発電

自然エネルギーの分野においても、ICは電力供給において重要な仕事をしています。そもそも、太陽光や風力といった自然エネルギーによる発電が行われても、そのままでは電力として使うことができません。発電した数100ボルトの直流電力・交流電力は、家庭用の交流100ボルト/200ボルトの電圧と周波数に合わせなければならず、その制御にはICが不可欠です。

コンピュータの消費電力削減

電子機器、とりわけコンピュータの消費電力削減は、世界的に重要な課題の1つとなっています。データセンターの消費電力を減らすため、半導体プロセッサーを独自開発した企業もあるほどです。様々なシステムに使われるコンピュータの消費電力を減らせると、二酸化炭素の削減につながります。例えば、コンピュータの回路を動作させるためのICで電力効率を上げられれば、その分消費電力の削減が期待できます。

3.脱炭素におけるパワーICの必要性

脱炭素の分野において、パワーICの必要性は高まっています。以下、パワーICの用途や役割、注目される理由を解説します。

パワーICとは

パワーICとは、大電力回路で使用されるパワー半導体を内蔵したICのことです。パワー半導体は、数十ミリワットの低電圧微少電流用途から1ギガワット程度のシステムまで、様々な用途に幅広く使用されています。パワーICは、太陽電池の駆動モジュールや、EVの制御用ユニットなどに使用されています。また、車載向け製品の需要は向上しており、将来的な市場拡大も期待されています。

生活インフラを支えるパワーIC

現代において、PC・スマホ・家電といったエレクトロニクス製品は、生活インフラに欠かせないものとなっています。しかし、これらの電気製品を各家庭で使用するためには、次のようなプロセスを踏まなければなりません。

・発電所で作られた高電圧の電気(交流)を変電所へ送電
・変電所にて、家庭や工場でも使用できる電圧に変圧して送電
・配電用変電所にて、各電気製品で使用できるよう交流から直流への変換

電気製品に組み込まれている多くの電子回路は、5V・12VのDC電圧で動作するため、変圧や電流変換を行うパワーICの働きは重要です。

パワーICによる電力消費量の削減も期待される

家庭・オフィス等で使用されている電気製品は、世の中の様々なニーズに応じて日々進化を続けています。その結果、日常的に使われている電気製品の数が増加し、電力消費量が急増しています。

例えば、一昔前なら白黒テレビ・冷蔵庫・洗濯機が「三種の神器」として喧伝され、多くの家に置かれていました。現代ではテレビも液晶となり、DVDプレイヤーやPC、空気清浄機、エアコン、全自動洗濯機など、多様な電気製品が置かれるようになりました。

特に、モータによる消費電力は世界中の総電力の40~50%を占めるとされ、この消費電力をパワーICによって減らすことができれば、将来的に数基単位で原子力発電所が不要になる可能性さえあるといわれています。

4.パワーICの代表的デバイス

新電元工業では、パワーICの性能向上に注力し、様々な分野で活用できる製品をご用意しています。

理想ダイオードIC

当社のMF2003SV V-Diode™はMOSFETを使用しており、SBDと比較して発熱・損失を低減でき、ΔVDS≒40V程度でクランプするアクティブクランプ機能を備えています。また、ウェッタブル・フランク対応のリードレスパッケージ「WSON8(4.0㎜ サイズ)」を採用しており、小型パッケージとなっているのも特徴です。

LLC電流共振用IC

当社独自の非対称制御を搭載したLLC電流共振用ICは、全負荷領域での高効率を実現しています。最大500kHz(通常動作時)の制御に対応しており、トランスの小型化、電源の小型化に貢献する他、共振外れ保護、入力監視、パルスバイパルスの過電流保護等の保護機能を内蔵しています。

ドライバIC(MCZシリーズ)

ドライバICとは、MOSFETやIGBTなどのパワーデバイスを駆動させるためのICのことです。高耐圧の素子を内蔵しており、インバータ回路・電源回路といった幅広い用途でご利用いただけます。

5.まとめ

ICには様々な種類があり、EV等の制御や充電の他、自然エネルギーによる発電にも用いられています。高性能な電源IC等を使用することで、電力効率が向上すると、各種システム等で用いられているコンピュータの消費電力の削減も期待できます。新しい電気製品が増えると、私たちの生活はより便利になりますが、その分使用電力も増えてしまいます。脱炭素と電気製品の進化を両立させるためには、高性能のICが不可欠といえるでしょう。

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