EVシフトが日本で遅れている理由|将来の展望についても解説

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近い将来、日本ではEVシフトが避けられない状況となっています。その一方で、幹線道路を走るガソリン車の姿は未だに数多く存在しており、EVがまだ発展途上であることが現実です。自社として将来的には社用車等のEV化を進めたいと考えているものの、周囲がEVシフトする動きがあまり見られないことから、本格的な導入のタイミングが読めないと感じている方も多いのではないでしょうか。この記事では、EVシフトが日本で遅れている理由と、日本における将来の展望について解説します。

【目次】

1.日本でEVへのシフトは本当に進んでいないのか

一般社団法人 日本自動車販売協会連合会(自販連)の統計「燃料別販売台数(乗用車)」によると、2024年1月のデータでEVの割合は乗用車全体の1.1%となっています。日本で多くの支持を得ているのはHV(64.2%)であり、その次にガソリン車(29.2%)と続いている状況です。数字だけを見れば、主にガソリンで走る車が購入されていることになり、EVを購入しようと考えている人は少数派と言わざるを得ないでしょう。その一方で、HV・PHVをEVの一部として定義するならば、新車のおよそ65%以上がEVということになり、日本ではEV化が進んでいるという解釈もできます。

また、PHV・EVの国内販売台数は増え続けており、2023年1月から12月までの販売台数を見てみると、PHVは52,143台で前年比138.0%、EVは43,991台で前年比139.2%となっています。このことから、日本でEVへの意識が低いとは言い切れず、国の政策など何らかのきっかけによってユーザーの意識が大きく変われば、一気にEVへのシフトが進む可能性は十分考えられます。

2.日本でEVへのシフトが遅れているとされる理由

よく「日本ではEVへのシフトが遅れている」と言われますが、どのような理由からEVへのシフトが遅れているのでしょうか。以下。主なものをいくつかご紹介します。

インフラ整備が進んでいない

経済産業省の「充電インフラ整備促進に向けた指針」によると、ユーザーは多くの場所に公共充電器を置いて欲しいと考えている一方、充電施設は約3万口にとどまっています。政府は2030年までに公共用の急速充電器3万口を含む充電インフラ30万口の整備を目指すとしており、充電インフラの整備が進まない限り、EV利用者も増えないものと考えられます。

EV車自体に感じる魅力が薄い

2024年3月の現状において、消費者目線で考えた際、EV車の普及には次のような課題を乗り越える必要があります。

●EV車の価格(リチウムイオン電池のコスト)
●充電時間の長さ(急速充電器で30分)
●消費者の認知不足(EVを生活で使用するイメージが湧かない) など

このほか、軽自動車市場においてEVが普及するかどうか、中古EV市場が成熟するかどうかも、消費者が安価にEVを購入・利用するためのポイントとなるでしょう。ガソリン車と比較した際に「購入までのハードルが高い」状況を解決することが、EV普及には不可欠です。

寒冷地における不安

ユーザー目線で考えると、北海道・東北地方など比較的寒冷な地域においては、そもそもEVが厳しい寒さに耐えられるのか疑問視する声も強いようです。ヒーターの消費電力は決して馬鹿にならず、万一真冬に立ち往生することがあれば凍死のリスクもあるため、ガソリン車と同じ、またはそれ以上の暖房性能を実現できるかどうかが、寒冷地での普及の鍵となるでしょう。

3.日本におけるEVシフトの将来の展望

2035年に新車販売で電動車100%を実現することを宣言した日本にとって、EVシフトは現段階で避けられない課題であり、いずれは多くのユーザーがEVにシフトするものと考えられます。以下、日本におけるEVシフトの将来の展望について解説します。

車体価格が安価になる

EVの普及は世界的に進んでおり、例えばバッテリ開発で競争が激化すれば、それに伴い品質向上・価格低下が進むものと考えられます。また、EV自体の普及台数が増えれば、それだけ車体価格も安くなることが想定され、2035年には多くのユーザーが電気自動車に乗り換えるものと推察されます。

消費者の意識が変わる

多くのメーカーでは、電動化率を高めることや、世界でEV車種を増やすことなどを考えて戦略を立てています。それに伴い国が補助金を出すなどしてバックアップを進めれば、よりEVの普及率が高まる可能性があるでしょう。メーカー側のラインナップにEVが増えてくることで、次第に消費者としても「次買う車はEVになるだろう」という意識が強まるものと考えられます。

“走行中充電”の実用化の可能性も

充電設備の設置につき、国は補助金制度を設けているものの、2024年現在では思うように拡充が進んでいない状況です。充電施設を屋外設置した場合の耐用年数が概ね8~10年であることを考えると、利用率が少なくコストが高い充電設備の維持は容易ではなく、実際に劣化した施設が撤去される例も少なくありません。しかし、走行中に充電ができる技術が普及すれば、ユーザーは充電施設の場所を気にしながらドライブルートを考える必要がなくなるため、早期の実用化が期待されます。

4.EVシフトの鍵を握る”充電器”の存在

走行中充電の実用化も魅力的ではありますが、EV普及において避けて通れないのが充電設備の普及である点は否めません。充電器の機能は年々進化しており、休憩スポットやディーラー向けの大規模なものだけでなく、コンパクトかつレイアウトが自由な充電器も登場しています。新電元工業でも、日本でEVが普及する未来を見据え、次のようなラインナップをご用意しています。

5. まとめ

欧米に比べると、日本のEV普及率は決して高いものではありませんが、PHV・EVの国内販売台数は増加傾向にあります。政策の大幅な転換などを経て、将来的に普及が進む可能性は十分あります。中古車市場にEVが登場するなど、車体価格が安価になれば、EVはより消費者の手に届きやすくなるでしょう。そのような未来を見据えて、EVや充電設備を試験的に導入し運用ノウハウを自社に蓄積しておくと、将来の本格導入に役立つはずです。

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