GaN-HEMTの特徴
通常GaN-HEMTはノーマリオンなので、これをオフにするには普通のMOSFETとは異なる制御が必要です。
ノーマリオンのGaN-HEMTをOFF状態にするには、2DEG層を空乏化する必要があるので、図のようにG-S間にマイナスの電圧を印加します。
回路的にはノーマリオフの方が使いやすいので、ノーマリオフ化がGaN-HEMTの課題となっています。
カスコード接続によるノーマリオフ
- 低圧(LV)MOSFETとカスコード(直列)接続する方法
GaN-HEMTはノーマリオフと低オン抵抗化はトレードオフの関係にあり両立が課題となっており、ノーマリオフを実現する手法の一つにカスコード接続があります。
カスコード接続とは、図のように低耐圧MOSFET(LV-MOSFET)と直列に接続して使用します。一般に2つのチップを1パッケージに組み込んで構成します。
ON/OFFはLV-MOSFETで制御し、耐圧はGaNで持たせるという発想。LV-MOSFETはノーマリオフなので、この素子もノーマリオフとして従来の回路で使用できる。
ON抵抗はGaNとLV-MOSFETの合計となる。
GaN-HEMTの特性
項目 |
記号 |
単位 |
GaNーHEMT |
GaNーHEMT |
SiC-MOSFET |
Si-MOSFET |
---|---|---|---|---|---|---|
A社 |
B社 |
C社 |
D社 |
|||
ドレイン・ソース間電圧 | VDSS |
V |
650 |
650 |
650 |
650 |
ON抵抗 |
RDS(ON) |
mΩ |
50 | 50 | 60 | 40 |
ゲートしきい値 |
Vth |
V |
1.7 | 4 | 2.3 | 3.5 |
入力容量 |
Ciss |
pF |
242 | 1,000 | 1,020 | 4,340 |
ゲート全電荷量 |
Qg |
nC |
6.1 | 16 | 46 | 93 |
逆回復電荷量 |
Qrr |
nC |
0 | 125 | 110 | 13,000 |
Ron×Ciss(性能指数)*1 |
- |
Ω・pF |
12.1 | 50 | 61.2 | 173.6 |
*1: GaN-HEMTは性能指数(FOM)が優れているだけでなくQgが非常に小さいのが特長です。
これは高速でスイッチングできることを表しているので、高周波数での用途に期待が集まっています。
材料の性能指数から言えば、まだ進化の余地があります。
*2: GaN-HEMTのカスコード接続はVthが高いため制御性はよいのですが、
容量成分(Ciss, Qg, Qrr)が大きいため、単体のGaN-HEMT(E-mode)に比べて
高速スイッチング特性は劣ります。