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EVのバッテリ寿命は何年?
ディーゼル車・ガソリン車とも比較しつつ解説

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日本でも、街中でEV(電気自動車)を見かける機会が増えてきています。政府も「2035年までに新車販売で電動車100%を実現する」方針を発表し、エンジン車全廃の方針を固めた自動車メーカーもあります。

まだまだガソリン車が主流の日本でも、今後EV購入はますます現実的な選択肢になるものと考えられており、普及のカギとなるのが「バッテリの寿命」です。この記事では、EVのバッテリ寿命について、ディーゼル車・ガソリン車とも比較しつつ解説します。

【目次】

1.EVバッテリの種類と基本的な寿命

EVに用いられているバッテリには複数の種類があり、自動車の種類などによって使い分けられています。以下、主なバッテリの種類と、基本的な寿命について解説します。

EVで用いられているバッテリ

一般的な電気自動車(EV)に用いられている駆動用バッテリには、リチウムイオン電池が用いられています。リチウムイオン電池は、大容量の電力を蓄えられるのが特徴で、EV以外では携帯電話・PC・産業用ロボットなどに用いられています。

ハイブリッド車(HV)をEVの範疇に含む場合、ニッケル水素電池もバッテリに含まれます。ニッケル水素電池は、リチウムイオン電池に比べて重く大きい傾向にありますが、素材が安価で手に入り、低温にも強いことから、寒冷地など一定のニーズがあります。

その他、ライト・オーディオ機器を稼働させる際に重要なのは、鉛蓄電池です。いわゆる「車のバッテリ」は鉛蓄電池を指すことが多く、様々な環境下で安定して性能を発揮できることから、長年車両に採用されてきました。

EVでは、これらのバッテリが目的に応じて使い分けられています。中でもリチウムイオン電池は、同じ重さの電池の中に蓄えられる電力が多いため、駆動用バッテリとして採用されることが多いのです。

リチウムイオン電池は三元系(NMC)とリン酸鉄系(LFP)に分かれる

駆動用バッテリとして用いられるリチウムイオン電池は、用いられている素材によって、大きく「三元系(NMC)」と「リン酸鉄系(LFP)」の2種類に分かれます。NMCはニッケル・マンガン・コバルトの化合物を正極に使用した電池のことを、LFPはリン酸鉄リチウムを正極素材に使用した電池のことをいいます。

近年特に注目を集めているのがLFPで、NMCと比較して以下のようなメリットがあることから、搭載車両も増えてきている状況です。

・寿命が長い
・自然放電が少ない
・100%満充電で劣化しにくい

ただし、価格はNCMよりもやや高くなり、低温時には性能が低下しやすいというデメリットもあります。これからEVを購入しようと考えている方は、どのタイプの電池が搭載されているのか、バッテリの詳細についても確認するようにしましょう。

EVバッテリの基本的な寿命

EVを駆動させるリチウムイオン電池は、一般的に「8年または走行距離16万km」が寿命の目安とされます。ただし、電気自動車メーカーによって保証内容は異なり、メーカーの中には「8年または走行距離24万km」を保証しているところもあります。

リチウムイオン電池は、使用方法・時間経過・充電回数などの諸条件によって、劣化度合いにも差が生じます。しかし、例えば電球のように「所定の期間で完全に使えなくなる」わけではなく、徐々に充電機能が劣化していく点に特徴があります。

一般的な自動車の寿命と比較すると?

一般的な自動車の寿命と比較した場合、EVとの差はどのくらいなのでしょうか。以下、ガソリン車・ディーゼル車の寿命について解説します。

ディーゼル車の寿命
ディーゼル車には、軽油を使用して走るため経済的で、燃費が良く頑丈というイメージがあります。メンテナンス次第で走行距離50万km以上でも走れるため、運送業などの業種で人気を集めています。

単純に走行距離だけで比べれば、EVよりも長く走れる車が多いものの、騒音や排気ガスの問題から、将来的に日本の公道を走れなくなるリスクも危惧されています。例えば、首都圏1都3県においては条例によりディーゼル車への規制が設けられており、今後も他の道府県で同様の条例が施行された場合、ディーゼル車は日本から完全に姿を消してしまうかもしれません。

ガソリン車の寿命
適切なメンテナンスによって、ガソリン車でも走行距離が20万km~30万kmを超えることは十分考えられます。タクシーなどの商用車に関しては、40万km以上走るケースも珍しくありません。

しかし、ガソリン車に乗り続けるリスクもあり、政府の取り組みが順当に進めば、2035年以降に新車でのガソリン車・ディーゼル車の購入ができなくなります。走行距離は現行のEVより長かったとしても、やがては「ガソリン車自体に乗れなくなってしまう」時代がやって来るかもしれないため、将来を見越した車選びが重要です。

2.EVのバッテリはなぜ劣化するのか

EVのバッテリ寿命を延ばすためには、極力バッテリが劣化しにくい使い方を心がけることが大切です。しかし、そもそもなぜEVのバッテリは劣化してしまうのか、原因がよく分からない方も多いのではないでしょうか。

以下、駆動系バッテリであるリチウムイオン電池にスポットを当てて、EVのバッテリがなぜ劣化するのか解説します。

充電・放電を繰り返す

バッテリが劣化する原因の1つとして、充電・放電を繰り返すことがよく知られています。リチウムイオン電池は、比較的充放電による劣化は生じにくいものの、残念ながら完全に劣化を止められるわけではありません。

バッテリの使用を継続していると、負極材料として用いられている炭素の分子構造が変化し始め、炭素内に収まるリチウムイオンの量が減ってしまいます。電池への充電は変化を加速させることから、複数回の充電・放電が必要になるEVにおいて、劣化のリスクは避けられないものと考えてよいでしょう。

高温となる環境で使用する

リチウムイオン電池は、60℃以下の温度環境で使用する場合、劣化が起きないように設計されています。しかし、電池が高温になるとバッテリ内の化学反応が活発になり、急速に寿命が短くなります。

充電せず長期間放置する

リチウムイオン電池は、使わずにいると「自己放電」という現象が起こります。EVを運転していなかったとしても、その間に勝手に放電してしまうので、定期的に容量をチェックして充電する必要があります。

自己放電によって充電がなくなってしまっても、電池は放電を続けようとする性質があり、これを「過放電」といいます。過放電が続くと、電極の負極に用いられている銅箔が溶けてしまい、最終的には充電できなくなってしまう恐れがあります。

3.EVでバッテリの劣化を防ぐためのポイント

EVに乗り続ける上でドライバーが気を付けたいのは、バッテリの劣化を防ぐことを意識した運転です。以下、EVでバッテリの劣化を防ぐためのポイントをご紹介します。

高スピード運転は控える

EVのバッテリは、電気の出し入れが急激に行われると発熱します。長時間バッテリが高温になると、それだけバッテリ劣化が進行しやすくなるため、EVで過度にスピードを出して走るのはおすすめしません。

一般道はもちろんのこと、高速道路を使わなければならない場面であっても、法定速度を守ってスピードを抑えるよう心がけると、バッテリの急激な温度上昇を防ぐことにつながります。

充電の残量がある状態で充電する

過放電・長時間放置による劣化はもちろんのこと、定期的に運転している場合でも、バッテリの残量には気を配る必要があります。充電が少ない状態・満タンに近い状態で車を走らせると、その分劣化も早まります。

満充電を行う際は、長距離運転が必要な場合にとどめておき、基本的にはバッテリの残量が概ね「30~80%」となるように充電するようにしましょう。

暑い時期の保管場所に気を配る

EVの多くは、バッテリの温度を一定に保つような工夫をしています。しかし、真夏日に直射日光を浴びるような環境で駐車していると、バッテリにダメージを与える恐れがあります。

多くの場合、自分の車を駐車している駐車場の位置を変えるのは難しいため、日差しを避けるような対策を施したいところです。スペース的に問題がなければ、カーリーフや日除けシートなどを使うとよいでしょう。

4.EVバッテリの寿命が訪れてしまった場合の対処法

EVにおいて、バッテリの寿命が訪れてしまった場合、実質的にその車の寿命を意味するケースがほとんどです。ただし、メーカー側もユーザーのことを考えて保証体制を整えているため、以下の内容を確認して対処することをおすすめします。

あまり充電していないのにバッテリ容量が低下した場合

EV・バッテリには個体差があるため、充電回数が少ない・走行距離が短い状況でバッテリの劣化が進むケースは十分考えられます。そのような状況をメーカーも想定しており、多くのメーカーでは、バッテリ容量が一定以下に減少した場合、無料での修理・交換に対応しています。

期間・距離の目安や保証される容量に関しては、メーカーによって違いが見られるため、EV購入時に確認しておきたいところです。メーカーの適用期間・距離のタイミングでバッテリ容量が低下した場合は、早めに相談するようにしましょう。

一定の期間・距離を走り込んだ後でバッテリ容量が低下した場合

EVの駆動用バッテリは、エンジン車におけるエンジンと同様であり、バッテリ容量が低下した場合に交換することもできます。海外のメーカーの場合、急速充電の代わりにバッテリの組替えを簡単にしているモデルもあるため、近い将来、日本でも一般的な解決策となるかもしれません。

しかし、一定の期間・距離を走り込んだ後には、新しいバッテリへの交換が必要になることが多く、そのコストも比較的高額です。よほど現在の車に愛着がある場合を除いては、中古車または新車の購入を検討するのがベターです。

5.まとめ

EVを駆動させるためのバッテリとしては、リチウムイオン電池が使われており、一般的に8年または16万kmが寿命の目安となっています。ディーゼル車・ガソリン車のような化石燃料で走る自動車が、今後淘汰されていくことを考えると、将来的に電池の性能はさらに向上するものと考えられます。

EVの特性を理解して、バッテリをいたわる走り方・保管方法などを工夫すれば、バッテリの寿命を延ばすことにつながります。万一、早期に劣化してしまった場合でも、メーカーの保証があれば安心です。

よりバッテリへの負荷を減らしたいのであれば、バッテリに与える負担が少ない、普通充電器を活用する方法があります。

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