EV普及で重要性を増す半導体の役割とは?開発の展望

2022年11月掲載

EVを普及させるためのカギとなるのが「半導体」です。EVに興味があっても半導体についてよく知らないという方も多いのではないでしょうか。 

EVに搭載されている半導体の種類や役割について知ると、今後のEV開発について見えてくるかもしれません。 

そこで今回は、半導体の基礎知識や車に使われる半導体の一例とその役割、今後の開発の見通しについて解説します。 

【目次】

1.EVの発展には半導体が欠かせない!

半導体は電子機器の制御システムに使われる部品として重宝されており、その一例が「CPU」 (Central Processing Unit )です。CPUは自動車において、エンジン・タイヤ・ハンドル・オートマチックミッション・ブレーキなど、あらゆる動きを制御する「頭脳」の役割を担っています。 

また、半導体は電子制御ユニット「ECU」 (Electronic Control Unit ) にも使用されます。現在市販されている自動車では、ECU が百数十個搭載されているといわれており、今後、自動車の電子制御化・EV化が進めば更に需要は高まるでしょう。 

ECUの需要増加は、そこに搭載されている半導体の性能が一層重要になることを意味します。そのため、半導体の進化がそのままEVの進化に直結するといわれているのです。 

2.車載半導体の一例とEVにおける役割

車載向けに使用されている半導体には様々な種類がありますが、中でもパワー半導体は通常の半導体と比較して高電力、高電圧に対応できるため、EVにおいても活躍が期待されています。 パワー半導体は電力や電圧など電気系統を制御するため電子機器の「筋肉」に例えられる半導体です。 

車載用パワー半導体の課題は効率化と小型化です。現在はSi(ケイ素)を主流素材としていますが、更なる低電力損失を実現し性能を大きく向上させるために、次世代素材であるSiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)の実用化が求められています。 

パワー半導体にも様々な種類があり、今回はその中から2つを紹介します。

インバータモジュール 
インバータモジュールはインバータを中心に据えた集積回路(IC)を組み合わせた部品です。システムからの指示に従ってモータの作動や停止、回転速度の変更といった動作を行います。 
インバータモジュールが目指すのは、部品点数や実装面積の削減によるシステムの小型化や省スペース化です。これにより車両の軽量化が実現すれば、生産コストの削減や航続距離の延伸に繋がります。  

ダイオード 
ダイオードは電流を一方向にのみ流し、逆流しないように調整する「整流作用」を持つ電子部品です。液体でいえば、流れをせき止める「弁」のような役割だと考えるとわかりやすいでしょう。

EVで使用するインバータは扱う電流や電圧が大きいことからノイズを発生させやすいため、ダイオードによって車体システムの制御を行う電子制御ユニット(ECU)を保護する必要があります。車のEV化や電子制御技術の進化に伴い、需要はますます高まっていくでしょう。 

3.温暖化対策も自動運転も半導体がカギ

半導体はEVの発展だけでなく、これからの自動車技術に欠かせないものです。 

半導体によりEV車両の効率化ができれば、EVの電力ロスを減らし省エネが可能となります。EVの普及が進めばCO2排出量の削減や石油依存の脱却にもつながり、温暖化対策に大きく貢献するでしょう。 

また、運転中にリアルタイムで大容量の情報通信を行う自動運転車にとっても半導体の技術はなくてはならないものです。 

周囲の車や障害物の位置や距離を測定するセンサや運転の判断をつかさどるプロセッサに半導体が使用されていたり、車両の制御システムにパワー半導体やマイコンが使われていたりします。 

これらの技術開発が進めば、完全自動運転の実現も夢ではないかもしれません。

4.日本でもますますEVの半導体開発が活発に!

EV向けの半導体市場は今後ますます拡大すると見られ、国内の半導体企業の多くが増産投資に注力しています。中にはより高性能な次世代パワー半導体を実現するために、SiC(炭化ケイ素)の生産能力を、2024年までに10倍に引き上げるという目標を立てている企業もあるようです。 

日本はEVに必要不可欠なパワー半導体の1つであるIGBTの世界トップシェアを誇っています。 

2020年の新型コロナウイルス感染症の流行をきっかけに半導体不足が引き起りました。これには、テレワークの実施に伴いノートパソコンの需要が急増したことや巣ごもり中の娯楽として大型テレビが売れたこと、公共交通機関の利用を避けるために自動車で移動する人が増えたことが挙げられます。 

この事態を教訓に、国内の生産体制は今まで以上に強化されつつあります。今後半導体不足になったとしても、自国内で供給できるのは日本にとって大きなメリットとなるでしょう。 

5.まとめ

半導体は電子機器の制御システムに使われる部品として重宝されており、身近なものにパソコンやスマホのCPUがあります。EVはガソリン車と比べて10倍以上もの半導体を必要とするため、半導体の発展がEVの発展に直結するのです。 

車載半導体には様々な種類がありますが、EV開発においては電力や電圧など電気系統を制御するパワー半導体が期待されています。現在次世代素材であるSiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)の開発が進められており、実現すれば更なる効率化が実現するでしょう。 

EVのみならず、温暖化対策や自動運転においても半導体の技術は欠かせません。日本でも半導体の開発が盛んに行われており、今後の半導体開発の動向も見逃せないものとなっています。 

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