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半導体業界の今後10年とその後の未来|日本の立ち位置はどうなる?

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半導体業界の景況は、短期的に好況・不況の波を繰り返しながら、成長が続いています。新型コロナ禍においては、テレワークの増加によるノートパソコンの需要、公共交通機関の利用を避けるための自家用車の需要が急増し、自動車メーカーでは半導体不足による減産・操業停止になるほどでした。

スマートフォンの5G移行、クラウドコンピューティングの継続的成長など、今後も新たなニーズが生まれている半導体業界は、今後どうなっていくのでしょうか。この記事では、半導体業界の今後10年の動きやその後の未来について、日本の立ち位置に触れつつ解説します。

【目次】

1.半導体業界の2023年~2024年の動向

世界各国の予測値を見る限り、半導体業界の2023年は決して楽観視できませんが、2024年には回復に転じる見通しとなっています。ただし、半導体業界でも「2024年問題」がささやかれているため、その点は注視すべきポイントになるでしょう。

2023年半ば・後半までは需要減傾向

JETROの地域・分析レポートによると、カナダに本社を有する技術情報サービス会社TechInsightが、2023年1月23日、2023年の世界の半導体売上高が前年比5%減の「6,070億ドル」になるとの予測値を発表したことが分かっています。また、同レポートにおいて、2022年下半期からの半導体需要の減少傾向は、少なくとも2023年半ばから後半までは継続するものと報じられています。

2024年以降はプラス成長

先述したTechInsightの発表によると、2024年以降については、メモリやロジックなどのICやO-S-Dを含む幅広い製品群での需要回復が見込まれ、2024年の半導体売上高は同10%増、2025年は同11%増、2026年は同14%増と3年連続で2桁のプラス成長となる見通しです。

このような数字を見る限り、2023年の厳しい状況を耐えた後、半導体業界は今後も継続的に成長するものと期待できそうですが、逆に2024年から半導体不足の状況に終止符が打たれるという意見もあります。

気になる「2024年問題」

半導体市場は、需要回復が見込まれる一方で「2024年問題」も懸念されており、現在も続いている世界的な半導体不足が2024年に終息すると、一転して供給過剰に陥る可能性もあります。

半導体工場の建設から稼働までには数年間を要しますが、世界各国の新工場の稼働時期は2024年頃となっています。新工場が複数稼働することで、逆に供給過剰に陥るリスクが生じるというのが、2024年問題です。

2024年問題が現実のものとなれば、半導体製品の低価格化を招き、メーカーの収益性は悪化する恐れがあります。その一方で、半導体製品が安くなると電子機器への搭載量も増えることから、2024年問題は社会全体のデジタル化を促進するチャンスにもなり得ます。

2.今後10年の半導体業界

2023年から2024年まで、半導体業界の景況は不透明な状況が続くものと考えられます。しかし、今後10年の半導体業界に関しては、ポジティブな意見も聞かれます。

以下、半導体業界における、今後10年の状況について解説します。

PC・タブレット・スマートフォンのブームは過ぎた

半導体業界の米コンサルティング会社・Semiconductor Intelligence(以下SI)の記事によると、新型コロナ禍の2年間(2020~2021年)はPC・タブレットのニーズが高かったものの、2022年には前年比17%減まで落ち込んでいます。スマートフォンに関しても、2021年に比べて11%減となり、PC・タブレット・スマートフォンに関しては、すでにブームが過ぎたものと考えられます。

長期的には明るい見通し

2023年以降の車載半導体市場は、自動車の半導体搭載量が増加するため、長期的には明るくなる見通しです。SIでは、今後10年にわたって車載半導体市場をけん引する分野として、電気自動車(EV)、運転支援・自動運転車、インフォテインメントシステムを挙げています。

今後10年で100兆円規模になる可能性も

IoT・AI・5G・ビッグデータ活用など、世界中でデジタル社会への移行が進んでいるため、中長期的な視点から見て半導体の需要は高いものと推察されます。先述した2024年問題でも少し触れましたが、半導体メーカーは製造キャパシティを増やすための設備投資を行っており、今後の需要に備えているものと考えてよいでしょう。

これまでスマートフォン・PC・サーバーが占めていたニーズは、将来的に産業用途・医療・自動車向けのものに変わるものと予想されます。

3.その後の半導体市場はどうなる?

今後の半導体市場は、どのように発展していくのでしょうか。以下、将来の半導体市場について考察します。

シンギュラリティが一つの契機に

AIの進化が進むことで、AIが人間の知能を超える転換点(シンギュラリティ)がささやかれるようになりました。具体的な時期は2045年とされていますが、より早い段階でやって来るという意見もあります。AIの進化が加速度的に進むにつれて、コンピュータで使われる半導体のニーズも高まるはずです。遅くとも2045年までには、半導体市場は新たな活況を迎えるものと考えられます。

半導体製造も「DX化」

様々な職種・業界でDX化が進められており、今後は半導体業界でもDX化が進んでいくものと考えられます。人間では発見できなかった欠陥や作業の省力化など、様々な側面で生産性向上が期待できるため、半導体業界はより多くのニーズに応えられるようになるでしょう。

新たなアイデアによる性能向上

新製品開発において、これまでと異なる新たなニーズが生まれると、それに伴い新たな市場が誕生する可能性があります。例えば、半導体の性能向上はこれまでその集積度に依存していましたが、微細化というアプローチでの限界が見え始めており、半導体の三次元化(三次元構造のチップ)など新しいアイデアによる性能向上が期待されています。

半導体を三次元化する工程においては、チップを積み重ねる作業に正確さが要求されます。より精密な作業を実現できる企業、半導体を樹脂などでパッケージングする技術を持つ企業は、将来的に活躍の場を世界に広げるものと推察されます。

4.日本は世界のキープレイヤーの1つ

世界における半導体出荷額は年々増加しており、世界各国が自国内での半導体生産能力増に向けて動いています。日本もまた、世界におけるキープレイヤーの1つです。

世界の半導体市場における主要プレイヤー

世界の半導体市場においては、世界各国の企業が設計・製造や製造装置などの分野でしのぎを削っています。半導体生産能力の観点からは、韓国・台湾・中国などの生産能力が高く、特に中国は「軍事の現代化」のために自国内での半導体生産能力を伸ばしており、アメリカは中国に対して先端ロジック半導体関連の規制を実施しています。

日本の半導体生産能力も高い

日本の半導体業界は、自動車メーカーなどの手堅い需要もあって、世界各国と比較して十分に健闘しています。特に、半導体製造装置市場においては、アメリカに次ぐ規模のシェアを有しています。

5.まとめ

半導体業界は、2023年半ば・後半までは需要減傾向が続くという見方が強いですが、2024年以降はプラス成長が期待されています。しかし、新工場稼働に伴う供給過剰により、半導体製品の低価格化が進む「2024年問題」の可能性も否定できません。

2023年から2024年までは、やや不透明な状況が続くものの、長期的には市場規模が大きくなる見通しです。世界のキープレイヤーの1つである、日本の今後の動向にも、各国が注目するものと推察されます。

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