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半導体不足の原因とその解消|自動車・家電業界の品薄事情についても解説

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新型コロナウイルスの蔓延などの理由から、2020~2021年に表面化した半導体不足。この問題によって、自動車や給湯器など、私たちの生活を支えるモノが手に入りにくくなりました。

2022年以降、この状況は徐々に改善されつつあります。しかし、自動車業界・家電業界などでは、半導体不足が2023年を迎えてからも続いている状況です。

この記事では、世界的な半導体不足が起こってしまった原因や、半導体不足が深刻な業界、半導体不足が引き起こす問題について解説します。

【目次】

1.世界が半導体不足に至った原因

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、物流が寸断されたことが世界的な半導体不足のきっかけと考えている方は多いかもしれません。しかし、パンデミック以外にも、半導体不足を引き起こした原因はいくつか存在します。

以下、世界中で半導体のニーズが高まった主な理由をご紹介します。

これまでの半導体需要の変化

半導体のニーズは多岐にわたり、自動車・産業機械・家電製品など様々な分野で必要とされています。パンデミックの影響により、これらの需要のバランスが大きく変化し、特に家電や情報端末のニーズが強まりました。

自宅学習やリモートワークの普及により、5G・クラウドコンピューティングなどの成長分野が、半導体の生産枠を押さえるようになります。

工場の生産能力は限られているため、一部の需要だけを満たし続けると他の需要を満たすことはできません。その結果、自動車メーカーなどは必要な半導体チップの量を予測して発注していたにもかかわらず、半導体不足に陥ってしまいました。

国際情勢

常に変化する国際情勢が半導体業界に影響を与える場合もあります。米中対立もその一例で、2022年10月から米商務省産業安全保障局(BIS)は、中国人民解放軍の現代化や人権侵害などを理由に半導体の輸出管理を大幅に強化しています。

日本は長らくアメリカの同盟国として協力関係にあり、今回の動きにも同調を求められていることから、規制以前のように半導体を確保することは難しくなってきています。また、アメリカは台湾および台湾の半導体製造企業との関係を深めており、この点が中台関係の緊張にもつながっているものと考えられています。

その他、間接的な原因としては、ロシア・ウクライナ情勢の悪化に伴う希ガス・希少金属の確保が難化するリスクがあげられます。材料の供給に悪影響が及ぶことにより、その分だけ価格の高騰が予想されるため、半導体の確保はより難しくなるでしょう。

半導体工場の事情

半導体を製造する工場側の事情も、半導体不足に関係しています。例えば、新型コロナ禍により公共交通機関の利用が避けられたため、自動車の需要が増加しました。その結果、自動車の動力制御に使用されるMCUなどの半導体が著しく不足しています。

MCUなど不足が目立つ半導体は、最先端の半導体製造工場ではなく、一世代前の8インチウエハー工場で製造されています。しかし、こうした工場の多くが老朽化のタイミングを迎え、使用できなくなっています。

このため、多くの半導体メーカーはファウンドリ(受託製造メーカー)に頼らざるを得ない状況でした。しかし、ファウンドリ側では生産能力を増強していなかったため、急激な需要増に対応できませんでした。

さらに、世界中の車載用半導体を生産していた工場が火災や停電などの被害を受けたこともあり、完全回復までには時間を要するものと推察されます。

2.半導体不足の原因は解消された?

半導体不足は、2022年中頃から解消の傾向を見せ、2023年は半導体業界がマイナス成長になるという意見も聞かれるようになりました。しかし、依然として半導体不足に悩まされる業界も多く、半導体事情は二極化している状況です。

以下、特に半導体の需要が高い業界について解説します。

自動車業界

半導体メーカーが成長産業への供給を優先したことで、自動車業界は大きな打撃を受けました。新型コロナ禍で供給をはるかに上回る需要が生まれたことも一因ですが、自動車業界のサプライチェーンにおける「手持ちの在庫を少なくして無駄を省く」動きが、想定外の欠品を招いてしまったのです。

2023年5月5日には、WHOが「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」の宣言を終了すると発表しており、自動車業界では更なる需要の回復が見込まれます。自動車メーカーが減産の状況を乗り越え、必要な量の半導体を確保するためには、安定した供給先との取引が重要なファクターとなるでしょう。

家電業界

家電業界も、半導体不足に悩む業界のひとつです。新型コロナ禍においては、半導体不足のため給湯器が故障しても修理・交換ができず、生活が成り立たない状況に陥った家庭も少なくありませんでした。

白物家電だけでなく、人気ゲーム機・スマートフォンに関しても、品薄が続くケースが見られました。納期が延び続けた結果、メーカーがユーザーに対して供給状況を発表する事態に追い込まれた例もあります。

3.半導体不足が引き起こす問題とは

半導体不足によって、消費者・事業者が将来的に遭遇する問題には、どのようなものがあるのでしょうか。以下、具体的なリスクについて解説します。

欲しいものが手に入らない

半導体の活用先は多岐にわたるため、一部の商品に使われる半導体だけが過剰に存在していても、それが代わりの役目を果たせるわけではありません。自動車には自動車の、家電には家電の使い道があり、必要な製品も変わってきます。

半導体不足が続くと、半導体を必要とする製品が製造できなくなります。その結果、消費者は欲しいものが手に入りにくくなり、事業者はビジネスチャンスを逃すことになるのです。

生活水準の低下

エアコン・冷蔵庫など、生活にとって必要なモノが手に入らなくなると、生活水準も低下してしまうでしょう。例えば、暑い夏に室内でエアコンが使えなければ、居住者が熱中症になるリスクも高まります。

公共交通機関が十分に整備されていない地域では、自動車が手に入らず修理も難しいとなると、通勤・通学に支障をきたすことが考えられます。人類が人間らしく生活するためには、もはや半導体は不可欠なものといっても過言ではないでしょう。

違法な商品が登場するリスクも

家電等の製品につき、半導体不足を理由に品薄の状態が続くと、消費者にとっては「何としても手に入れたい」という気持ちが強まります。そこに付け込んで、違法業者が粗悪品を開発し、通販等で販売する可能性があります。

品質の悪い半導体を使った製品は、火災等を引き起こす恐れがあります。メーカーとしても、自社製品の類似品が出回っているとなれば、注意喚起に時間と労力を割かなければならず、業務負担は増えるものと推察されます。

4.半導体不足を解消するには

企業が半導体不足を解消するには、自社で必要とする半導体製品につき、いち早く安定した供給先を確保することが重要です。安定した供給先を確保することで、自社製品の安定供給が実現し、エンドユーザーに安心感を与えることにつながります。

当社では、四輪車をはじめとするモビリティにつき、各種車載機器に向けた高性能・高品質なパワー半導体ソリューションをご提供します。

また、ホームアプライアンスの分野においても、白物家電からデジタル家電まで、幅広い家電製品向けのパワー半導体を供給しております

5.まとめ

新型コロナウイルスが世界中に蔓延したことで、半導体製品ニーズのバランスが崩れ、半導体不足に悩む業界は大きなダメージを受けました。米中対立や緊迫度を増すロシア・ウクライナ情勢等に代表されるような国際情勢の変化も、半導体の安定供給を妨げています。

半導体不足の状況が続くことで製品の製造が滞ると、粗悪品が出回るリスクもあり、メーカー側にも悪影響が及ぶ可能性は否定できません。半導体製品を安定的に確保することが、半導体不足に悩む企業にとっては喫緊の課題といえるでしょう。

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