新電元の英知で自動化ラインを構築「TW115」

  • 開発秘話File6バナー

<左>
山崎 康司
電子デバイス事業本部生産設備担当
2006年入社。半導体の生産設備技術者として、グループ会社の製造ライン構築に携わる。近年は半導体以外にも電装製品や磁性部品など電子デバイス事業本部製品以外にも幅を広げ、自動化ラインの設計なども担当。

<右>
石井 康大
電装事業本部設計担当
2005年入社。DC/DCコンバータなど主に四輪向け電装製品の構造設計を歴任。現在は車載電源製品の構造設計チームリーダーとして、新規構造設計の開発を取り纏めている。

2022年、世界の人口は80億人を突破した一方で日本をはじめとする一部の国では2100年までに人口が半減すると予測され、すでに一部の業界では労働力不足により業務に支障をきたすなど問題が顕在化してきています。他方、人手不足や最低賃金の引上げにより人件費の高騰も続いています。このようななか、当社では省人化を進め現場と一体となったモノづくりを進めています。

電装事業本部で2023年に量産化した四輪車向けDC/DCコンバータのTW115。
事業拡大を視野にコスト競争力の強化と生産能力の拡張を進めるために、電子デバイス事業本部と連携して自動化ラインの構築を進めました。

これまでは別々の事業本部でそれぞれの業務を担当していたメンバーが集結し、新製品開発に向けて力を注ぎました。

  • TW115外観

    TW115

自動化ライン構築に向け電装、電子デバイス両部門のタッグで始動

石井:四輪車向け製品の事業拡大のためにDC/DCコンバータの新製品を開発することが決まり、設計部門の一員として市場調査を踏まえた仕様の検討を進めてきました。事業を拡大するためにコスト競争力のある製品開発を行うことと生産現場の生産能力の面から、省人化した自動化ラインで立ち上げることが決まりました。
当初は外部の業者に相談してライン構築の検討をしていましたが相当額の投資規模になることから、電子デバイス事業本部で生産設備の設計開発の業務を行っている生産設備技術部に相談することになりました。

山崎:2021年の年始から電装事業本部とタッグを組んだプロジェクトがスタートしました。これまでは電子デバイス事業本部で開発するパワー半導体の生産設備設計などを担当してきたので、電装製品の生産ライン構築に携わるのは初めての経験でした。半導体とは工程の多さもラインの規模も異なります。また、このプロジェクトでは製品設計完了前の段階から参画しましたが、まだ仕様が固まっていない段階で生産設備の検討に着手するというのは、実績があまりなく最初は戸惑いました。

  • 開発担当者

手探り状態でスタートも、密な連携で乗り越える

  • 開発担当者

石井:自動化ラインの構築には時間を要するため、製品設計作業と同時進行で生産設備の検討も進めていきました。製品設計が固まっていない段階から設備設計の検討をする経験が少なく、山崎さんをはじめとする設備検討チームにどのような情報をどのタイミングで提供すれば検討を進められるのか。はじめは手探り状態でしたが、気づいた点があれば即座にミーティングできる環境であったことが、助けになりました。

山崎:半導体の生産設備を検討する場合は大抵、製品設計が完了しているところからのスタートです。すべて図面に落とし込まれた状態なので取組みやすい一方で、設備側の要求に沿った仕様変更は難しく、結果、設備側にしわ寄せがきてしまう場合もあります。TW115では製品の設計はまだ固まっていませんでしたが、電装から今どういう段階にいて、この部分は固まっている、という情報をもとに設備の設計を進めることができました。実際当初の想定になかった部材が途中で追加となった際も、事前情報から幅を持たせた設計にしていたことが功を奏して、大きな見直しをせずとも軌道修正ができました。
また仕様が決まっていない段階から検討に入れたことで、無理に設備に落とし込む必要が無く、自動機に合わせた仕様変更の相談もすることができました。

プロジェクト開始から約5か月が経過したある日、お客さんから追加の要求が舞い込んできて、生産レイアウトを一から見直す必要が出てきました。

山崎:納期が迫る中で大幅な見直しをせざるを得ない状況となりましたが、そのような情報もタイムリーに共有できる体制になっていたので、 やるしかないと腹をくくりました。

石井:外部の業者へ設備の依頼をする場合には、混乱を避ける意味合いもあり共有する情報とタイミングはどうしてもコントロールせざるを得ない部分があります。特に不確定な情報は、決まるまで伏せておくこともあります。
TW115の開発は社内同士のやり取りであったので、包み隠さず共有することができました。実際電装側では大きな課題と捉えていた仕様変更も、設備側ではさほど影響がなかったということもありました。課題の大小を整理して、集中すべきところにリソースを割くことができました。

量産間近に問題が発覚。チームプレーで乗り越える

2023年春の量産を控えた2022年10月。客先イベントに向けた出荷を終え、社内では電装、電子デバイスの両事業本部が量産体制の準備をするなか、予期しなかった問題が発覚します。

  • TW115自動化ライン
    TW115自動化ライン

石井:新たに導入したレーザーはんだの工程を確認していたのですが、レーザーが思いもよらぬ方向にあたってしまい、その結果照射してはいけない箇所にレーザーが当たってしまうことがわかりました。すでに量産を控えたサンプルも製造していた段階でしたので、仕様を見直すことになれば、お客さんへも迷惑が掛かってしまいます。設備もすでに完成している状態でしたが設計だけでは解決ができず、藁(わら)にもすがる思いで山崎さんへ連絡して、対策を練ることになりました。

山崎:設備側も生産現場に設置するための最終確認をしているところでしたが、石井さんから相談を受けて、すぐさま対策に取り掛かりました。まだ設備に手を加えるには間に合うタイミングだったことも幸いでしたが、これまで構築してきたチームプレーでなんとしても解決しなければとの思いでした。

最終工程の確認完了。モノづくりは次のステージへ

設計側と生産設備側が協力して知恵を出し合って発覚した課題を乗り越えて検証が完了し、2か月後に無事量産に向けた準備が整いました。

石井:コロナも重なり、開発途中はあきらめかけたこともありましたが、電子デバイス事業本部にも支えられて、やりきることができました。今回の開発で得た知見は、ガイドラインにまとめて電装本部内で共有し、今後省人化ラインで製造する製品開発に役立てることができるようにしています。

山崎:TW115稼働後もさっそく、現場から改善提案が送られてきています。現在はそれらを一つ一つ落とし込んでいっているところです。また、すでにシリーズの新機種開発も動き出し、生産現場で設計部門、生技部門が合同で議論を交わし、そこで出た意見をまとめて、トラブルが発生しそうな箇所を未然に防止し、作りやすく安定した品質のモノづくりも意識した開発を進めています。

  • 開発担当者

編集後記

当社では電装事業本部、電子デバイス事業本部、エネルギーシステム事業部の3つの事業があり、それぞれで開発スタイルや進め方の“いろ”が異なります。新型コロナを境に全社的に導入されたオンラインコミュニケーションツールも活用することで、新電元の技術力が結集されたTW115の開発では、電装、電子デバイス両事業本部が持つそれぞれの特色が融合され、当社グループ社内表彰制度の特級も送られました。すでに開発者の視点は次のステージに向けられており、更に一歩進んだ製品の誕生が期待されます。

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本ページに記載されている内容は、2024年4月現在の情報です。お客様がご覧いただいた時点で、情報が変更(生産・販売が終了している場合や、価格、仕様など)されている可能性がありますのであらかじめご了承下さい。

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