• 財務統括インタビュー

取締役 兼 常務執行役員 財務統括
受川 修

財務統括役員として、ご自身の経歴を踏まえて期待されている役割と、それに対する意気込みを教えてください。

1984年に銀行員として社会人をスタートし、約30年間を海外駐在も含めた国際関係業務に従事しました。その後3年間の銀行子会社勤務を経て、2016年4月に当社に入社しました。入社後は執行役員として財務・経理・内部監査を所管していますが、2023年6月の取締役就任の際に財務・リスクマネジメント統括の委嘱も受けております。

日本では1990年代にバブル経済が崩壊し、また1997年にはアジア通貨危機も発生しました。この環境下で、多くの企業が倒産、或いはリストラを余儀なくされました。私自身は銀行員として、不良債権処理に従事しましたが、ここから得た教訓は「企業存続のためには資金繰りを破綻させない」ことが重要であり、これは当社財務統括としての最重要事項であります。

東証プライム上場企業である当社は、「コーポレートガバナンスコード」で求められている諸項目を十分意識した経営戦略を採っており、その中でも財務戦略は極めて重要な一要素です。特に資本効率の向上に向けた取組みに注力しているところです。一方で当社のコア業務の一つであるデバイス事業はボラティリティが高いことから、安定した資金調達のためには相応の自己資本も必要です。当社事業の持続的発展に向けて、このバランスをどのようにとっていくのかが肝要でないかと考えています。

第16次中計の2年目にあたる2023年度における財務成果の振り返りを、「キャピタルアロケーション」および全体の「資本効率」と「財務健全性」の観点から、教えてください。

当社は、時代に適合した製品ポートフォリオを構築し、社会的課題の解決に貢献することが、 持続可能性(サステナビリティ)が要求される現代において企業価値の向上に資するとの考えから、2022年5月12日に「長期ビジョン2030」を公表しました。同時に、2022 年度から 2024 年度までの3ヶ年を期間とする「第 16 次中期経営計画」も公表しました。経営方針として 「長期ビジョンの実現に向けた基盤づくり」と定め、主要テーマを「稼ぐ体質づくり」「伸長事業拡大の布石」「温室効果ガス排出量削減分野へのリソース配分」とすることで、「長期ビジョン2030」で掲げるありたい姿に向け、事業の成長とサステナビリティを統合した製品ポートフォリオへの転換を促進してまいります。そして最終年度の2024年度には売上高 1,180億円、営業利益率 6.6%、ROE 8.3%、ROA 3.5%を経営目標に掲げました。

第16次中期経営計画の中間年度である2023年度は、最終年度に向けた躍進の年度であり、変化に強い事業運営を構築すべく、売上高1,122億円、営業利益 35億円、経常利益 35億円、親会社株主に帰属する当期純利益 19億円を目指してまいりました。しかしながら期初から中国における景気減速の影響を大きく受け、2回に亘り、業績予想数値の下方修正を行わざるを得なくなりました。
中国における景気減速の影響、コロナ禍での半導体不足対応で厚めとなったお客さまの在庫、並びに流通在庫の調整が継続したため、デバイス事業が大きく落ち込みました。加えて、EV充電器も政府補助金の早期枯渇で勢いが出ませんでした。電装事業はインド・インドネシアでの二輪市場の力強さに支えられて健闘しましたが、これだけではカバーできず、残念ながら当期純損失の計上となりました。
こうした状況下ではありますが、連結自己資本比率は40%を上回っているほか、有利子負債から現預金等を減じたネット有利子負債も減少傾向にあります。また取引金融機関からも万全のサポートも頂いて安定した資金繰りを実現しているなど、相応の財務健全性は確保できております。

貸借対照表効率化への取り組みとして、2点述べたいと思います。
1点目は、貸借対照表を事業別に切り分けた上で、事業別投下資本利益率(ROIC)のモニタリングを開始しました。当社の事業は半導体、電装品からインフラまで多岐にわたっており事業環境も様々です。事業環境に合わせて分析し、目標値を設定することで効率性を追求してまいります。まだ緒に就いたばかりではありますが、資本コストとROICは今後の投資案件等の判断の際に重要な指標となります。
2点目は、固定資産の中で事業に供していない、遊休資産の処分をこれまで以上に加速化しています。株主や取引金融機関の力を借りて、具体的案件を発掘しています。

今後の財務戦略を株主還元方針を交えて、教えてください。

当社の配当政策は、株主の皆様に対する利益還元を経営の重要課題のひとつと位置付けており、業界における競争力を維持・強化するための内部留保、株主資本利益率の水準、業績等を総合的に勘案して成果の配分を行っていくことを基本方針としております。この基本方針の下、2024/3期は当期純損失ではありますが、1株当たり130円という2023/3期の配当水準を維持することで、株主の皆様への還元を行わせていただきました。

また、PBR1.0倍割れの状態から脱却することも経営上の喫緊の課題です。短期的な向上策としては自社株買いや増配といった手法もありますが、脱却への近道は、事業の稼ぐ力・儲ける力を回復してさらに強化することと、株主の皆様を始めとするステークホルダーの方々が納得いただける成長戦略を示し、結果を出すことと考えています。

2025/3期は第16次中期経営計画の最終年度となります。計画策定時に目指した数値には残念ながら届きません。儲ける力を早期に回復させ資産効率を高めるために、デバイス事業を中心として、事業の筋肉質化に向けた施策に取り組んでいます。施策の一部には一時費用が必要となるものもありますが、将来の競争力向上のために、必要不可欠なものです。
併せて、保有意義に乏しい政策保有株式の処分等、貸借対照表のスリム化にも継続的に対応して参ります。
こうした取り組みを通じて、株主の皆様を始めとするステークホルダーの方々から、「信頼・評価される新電元グループ」となってまいります。

本ページに記載されている内容は、2024年8月現在の情報です。お客様がご覧いただいた時点で、情報が変更されている可能性がありますのであらかじめご了承下さい。

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