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2026年3月期の振り返り
2026年3月期(以下、当期)は、3セグメントの底堅い推移により売上高は増収(前期比7.6%増の1,138億36百万円)となったことや、前期のパワーデバイス事業における構造改革効果が発現したことにより、営業利益は38億48百万円となりました。経常利益の段階では為替差益、当期純利益では、キャリアデザインサポート*実施に伴う特別損失があったものの、投資有価証券の売却益もあり、3期ぶりに黒字転換を果たすことができました。ROEも8.2%と好転しました。
このように、第17次中期経営計画(以下、中計)の初年度の仕上がりとしては、最終年度に向けてしっかり軌道に乗せることができたと評価しています。
今回の黒字転換で効果が大きかった取組みが、パワーデバイス事業の事業構造改革です。コロナ禍以降、苦戦が続いていた中国市場については、現地製品を優先する国策などの影響もあり従前レベルに戻るのは難しいと判断し、2025年3月期に生産・物流・販売の体制を見直しました。
その効果が前期業績に反映された一方で、当初想定していた水準にはまだ届いていません。不足している部分は追加施策によって挽回し、引き続き事業全体の収益性を向上させてまいります。
また、当期は新中計のスタートにあわせ、組織体制を大幅に刷新しました。縦の事業組織と横の全社共通組織が一体となりマトリクス運営を強化するとともに、新たに「ものづくりセンター」を新設しました。新電元グループが成長を遂げるための基盤となり、中計達成および長期ビジョン2030の実現にむけた大きな力になると確信しています。
※ 2026年3月20日時点で満50歳以上かつ勤続10年以上の正社員およびセカンドキャリア社員を対象に、通常の退職金にくわえ、特別加算金の支給や外部専門業者による再就職支援を提供する制度。
成長戦略の考え方と取組み
私たちを取り巻く環境は、地政学的なリスクや市場の変動など様々な要因により、不透明かつ厳しさを増しています。このような時代において、成長戦略を描く上で最も重要なのは、いかに変化に適応していくかという点だと考えています。そのためには、目先の変動に過度に動じることなく、時代の潮流に合わせて事業や製品のポートフォリオを不断に見直し続け、適切なタイミングを見極めて成長投資を行っていくことが必要不可欠です。こうした考えの下、中計初年度である当期においては、将来への布石となる様々な取組みを着実に推し進めてまいりました。
インド市場の開拓
代表的な取組みを挙げますと、当社の最重要市場の一つであるインド市場の開拓を進めました。インドは人口ボーナスを享受して昨今著しい経済成長が続いており、当社の主力領域である二輪市場では、2030年代まで内燃機関主体の需要拡大が見込まれる一方、大気汚染対策により厳格化する環境規制を背景に、今後、電動化関連製品の需要も増加する見通しです。当社はこれらの両分野向けの製品を揃えており、市場の変化に対応するとともに、事業の成長に繋げることが可能です。
現在、当社のパワーユニット事業の二輪向け製品においてインド向けの売上が約3割を占めており、現地の生産工場である新電元インディアの第1工場はすでにほぼフル稼働の状況にあります。拡大するインドの二輪需要を取り込むため、当社は現地の生産能力の大幅な拡充を決断し、当期、新電元インディアの第2工場の建設を開始いたしました。この第2工場は2027年4月から稼働開始を予定しており、自動化ラインの導入などにより省人化並びに生産性を高め、コスト競争力の強化を実現していきます。また、現状は日系の二輪メーカーが取引の大部分を占めていますが、今後はインド現地のローカルメーカーも開拓し、さらなる販路拡大を目指していきます。これらの一連の取組みにより、2030年を目途にインドでの売上高を現状の1.5~2倍へと引き上げる計画です。
くわえて、パワーデバイス事業のインド進出も加速させています。すでに現地に販売機能を設置してリソースを増強したほか、生産面においては、現地生産にむけたリスク要因を慎重に見極めつつ、OSATの活用なども含めて進出方法を柔軟に検討しています。まずはその第一歩として、パワーモジュールの後工程の一部を移管する準備を進めております。
パワーデバイス事業における新たな事業取得
また、2026年1月に京セラ株式会社からパワーデバイス事業を承継した株式会社秦野新電元を新たに新電元グループに迎え入れました。この事業取得は、当社のパワーデバイス事業の次なる成長を牽引する中核になると確信しています。
この統合により当社の製品ラインナップが大幅に拡大したことに加え、産業機器市場を中心に、これまで取引がなかった新たな顧客やアプリケーションとの繋がりが生まれました。また、取得した設備には、ダイオードチップにおいて世界最大級の8インチウエハーに対応した生産ラインもあり、コスト競争力の強化につながると捉えています。一方で、生産拠点の増加に伴う固定費の増大という課題に対しては、全体最適の視点で生産レイアウトの適正化をスピーディーに行います。具体的には、取得した一部事業所の有用な設備を既存工場へ移設・集約したうえで、同事業所を閉鎖し、事業の収益性向上を図ってまいります。
私は事業統合において重要なのは、組織の土台づくりだと考えています。異なる企業文化を持つ組織の統合は、決して一朝一夕に成し遂げられるものではありません。だからこそ焦ることなく、当社が長年大切にしてきた、高いQCDパフォーマンスを意識した当社ならではの「品質に対する高い基準」と「ものづくりの思想」を妥協なく共有していくことが、真のシナジーを生む強固な土台になると考えています。
こうした丁寧な融合プロセスを経てシナジーを発揮することで新たな技術・製品を生み出し、次期中計から本格的な利益寄与を見込んでいます。今中計においても、京セラ株式会社パワーデバイス事業の取得を加味し、最終年度の売上高目標を1,200億円から1,300億円へと引き上げました。
業界再編と当社のポジショニング
現在、半導体業界では大規模な再編が取り沙汰されています。私はこのような転換期こそ、目先の動きに惑わされることなく、潮流を冷静に見つめることが不可欠だと考えています。やみくもに事業規模の拡大を追うのではなく、当社の事業と親和性や整合性が高い相手であるかを慎重に見極めたうえで、前向きかつ柔軟に提携やM&Aを検討していくのが当社の基本的なスタンスです。当期に実行した京セラ株式会社からのパワーデバイス事業取得も、まさに明確なシナジーが見込めたからこその決断です。先端パワー半導体を中心に業界再編の動きがみられる一方で、当社のパワーデバイス事業はダイオードを主力製品としており、あらゆる電子機器に不可欠な存在でありながらも、業界内ではレガシーに近い領域です。こうした製品や取り巻く市場環境が今後どのような方向に向かうかをしっかりと見極め、私たちの立ち位置を確固たるものにしていかなければなりません。
当社の最大の強みは、単なる半導体メーカーにとどまらない『パワーエレクトロニクスの会社』としての独自性にあります。自社で生み出したデバイスを単体で販売するだけでなく、自社のユニット製品やインフラ製品に組み込んで提供し、アプリケーション全体としての付加価値を最大化できる点に私たちの競争力があります。各事業部門が持つ知見を融合させ、お客様の課題に対してトータルなソリューションを提案できるこの強みを最大限に発揮することで、競争が激化する市場環境の中で独自のポジションを確立してまいります。
人的資本経営の進捗評価
長期ビジョン2030が掲げる「あらゆるステークホルダーから必要とされ続けるパワーエレクトロニクスカンパニー」に求められる「革新的」「先進的」には、イノベーションを追求する姿勢が不可欠です。このイノベーションを牽引する人材の活性化に向け、人的資本経営を重要課題の一つと認識して多角的に取組んでいます。
イノベーションを生み出す強靭な組織をつくるためには、長年培ってきた技術をしっかりと伝承していく一方で、意図的に人材を流動化させ、組織を活性化していく「動的なアプローチ」が必要であり、当社では従業員が自律的に挑戦できる環境づくりに注力しています。キャリア研修の拡充にくわえ、社内公募や社内副業制度などを導入し、一人ひとりが自由に能力を発揮し、幅広く活躍できる機会を広げています。
一方、在宅勤務やフレックス勤務といった働き方の多様化に伴い、従業員同士のコミュニケーションが希薄化しがちになるという課題にも直面しています。これに対し、当社は「つながり」を軸とした人材戦略を掲げ、対面での交流の場を設けたり、現場の声を経営層へフィードバックする仕組みを通じて、職場の心理的安全性を高めています。 こうした地道な取組みの成果はあらわれており、社内の議論が活発化するとともに、当社独自のエンゲージメント指数も年々上昇しています。
「個人の成長」と「組織のつながり」を両輪で回し、引き続き、活力に満ちた組織を構築してまいります。
ステークホルダーの皆様へ
中計の2年目となる2027年3月期は、各国の保護主義政策や地政学リスクの高まり、為替相場の変動などにより、依然として予測困難な経営環境が続くものと見込んでおりますが、当社は目先の変動に過度に動じることなく、前期に打った成長への布石である各取組みを力強く推し進めてまいります。
さらに、今後の持続的な企業価値の向上に向けては、財務・非財務の両面からアプローチしていく必要があります。まず財務面においては、資本コストや株価を意識した経営の実践が課題であると認識しており、事業別ROAの実効性ある運用などを通じて投下資本に対する効率的な事業運営を追求していきます。
一方、非財務面においては、今中計にて再定義した4つのマテリアリティ(重要課題)と非財務KPIの達成に向けて全社一丸となって取り組み、持続可能な社会への貢献と当社の成長につなげてまいります。
これまで当社は、社会に対する情報発信やブランディングという観点からのアプローチなどの活動が十分とは言えませんでした。しかし、今後は、ステークホルダーの皆様との対話を深めるため、新電元の「前向きな変化」を力強くお伝えしていきたいと考えております。株主・投資家の皆様はもとより、お客様、地域社会、そして従業員に至るまで、あらゆるステークホルダーの皆様から「信頼」と「誇り」を持たれる企業へと成長を遂げるために邁進してまいります。皆様におかれましては、今後ともなお一層のご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げます。
本ページに記載されている内容は、2026年8月現在の情報です。お客様がご覧いただいた時点で、情報が変更されている可能性がありますのであらかじめご了承下さい。