事業用EV充電器の導入メリット|種類や設置・運用の流れも解説

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将来のEV普及を見据え、近年では法人がEV運用や事業用EV充電器の導入を検討するケースが増えてきています。EV充電サービスを自社で提供することにより、自社施設の付加価値を高めたいと考えている企業も一定数存在しています。

実際に事業用EV充電器を導入する場合、どのようなタイプの充電器を導入するのか、設置や運用はどうするのかなど、検討すべきポイントがいくつか存在します。この記事では、事業用EV充電器の導入メリットについて、充電器の種類や設置・運用の流れにも触れつつ解説します。

【目次】

1.事業用EV充電器の導入メリットとは

事業用EV充電器とは、主に企業または自治体の敷地内、商業施設といった場所に設置されるタイプの充電設備をいい、個人宅に設置されるものよりも大規模なものが多く見られます。具体的な用途としては、自社の社用車をEVに買い替えた後でそちらの充電に利用するケースや、商業施設に設置してEV・PHV等の利用客の利便性を高めるケースなどが考えられます。

近年では、充電機能以外でもユーザー・オーナーにとって便利な機能が登場しており、車両管理システムとの連動による充電の最適化や、EV充電のエネルギー使用量やCO2排出削減目安量などの可視化など、環境規制の対応業務負担軽減につながるサービスが注目されています。商業施設向けのものに関しては、専用アプリを使ったキャッシュレス決済、各種ショッピング施設とのネットワーク構築など、集客強化につながる仕組みを備えたものも見つかります。

このように、事業用EV充電器はユーザーの様々な要求を満たす方法へと進化を続けており、充電器を運用するメリットは今後さらに増えていくものと予想されます。先んじて運用経験を積むにせよ、将来の導入を検討するにせよ、企業は事業用EV充電器による新たなビジネスチャンスを見逃さないことが重要です。

2.事業用EV充電器の種類

事業用EV充電器は、大きく分けて「普通充電器」と「急速充電器」の2種類に分類されます。それぞれ充電器としての特徴が異なるため、運用状況をあらかじめ想定した上で導入する必要があります。

普通充電器

普通充電器は、次のような特徴を持つ充電器です。

出力

3~6kW

充電時間

8~16時間ほど(フル充電可能)

設置工事費用

20~40万円ほど(1基あたり)

本体価格

70万円ほど(1基あたり)

大まかな予算感

90~130万円

普通充電器は、総じて設置費用が比較的安価に抑えられるのが特徴で、設置場所がコンパクトにおさまることもメリットに数えられます。充電のスピードは遅く、充電時間も長くかかりますが、普通充電器ならEVをフル充電することが可能です。充電時間が長くなることから、基本的には「一定時間EVを駐車する環境」に設置することにより、そのメリットを享受できる充電器といえます。

急速充電器

急速充電器は、次のような特徴を持つ充電器です。

出力

50kW~150kW

充電時間

約30~40分で80%程度の充電が可能(フル充電はできない)

設置工事費用

300~500万円以上(1基あたり)

本体価格

230万円~(1基あたり)

大まかな予算感

500~1,500万円

急速充電器は、普通充電器に比べて圧倒的にスピーディな充電ができます。その一方で、バッテリーへの負荷を考慮して、フル充電はできない仕様となっています。また、そもそもの設置費用が高価であることから、それだけの投資をして急速充電器を設置するメリットがあるかどうかは、企業や施設の事情により異なります。よって、設置予定の施設における顧客層や、施設での滞在時間を考慮して設置を検討することが大切です。

3.事業用EV充電器の設置・運用の流れ

事業用EV充電器の設置・運用の流れを知っておくと、実際に導入する際のイメージをつかみやすいでしょう。以下、大まかな設置・運用の流れについて解説します。

事業用EV充電器の設置の流れ

事業用EV充電器を設置するにあたっては、一般的に次のような手順を踏みます。

●現地調査および分析(経済性やCO2削減効果など)
●設計・見積り(補助金を使用する場合は申請・採択も)
●設計に基づき工事を実施
●工事完了後、運用開始
●必要に応じて保守・問い合わせ対応

現地調査から運用開始までの期間としては、概ね2~6ヶ月を要するものと考えて良いでしょう。

事業用EV充電器の運用イメージ

実際に事業用EV充電器の運用する場合、具体的な運用イメージとしては次のようなものが考えられます。

社用車の充電設備として

従業員が社用EVを利用する際、事業所内の充電器を利用し、充電時間・利用状況を記録して充電コストも管理

来客向けEV充電サービスとして

ホテル・商業施設・マンションなどで、ユーザーにEV充電の機会を設け、来客または入居者増につなげる

一般ユーザーへの解放

ガソリンスタンド、コンビニなどでEV充電サービスを提供したり、企業・店舗がアイドルタイムにEV充電器を外部に開放したりするイメージ

 多くの法人にとって現実的な選択肢の一つとしては、社用車の充電設備として事業用EV充電器を導入するケースがあげられます。社用車・営業車を自社の電力契約の単価で給電できると、外部の充電スポットを利用するケースに比べて電気代が安価になることが予想されるため、これまで従業員に支払ってきた燃料手当などのコスト負担が軽減できるでしょう。

4.EVインフラの進化は今後も続く

日本ではまだ普及まで時間がかかるとされるEVですが、その一方でPHVなども含め多様な車種の中から車を選べる利点もあり、近い将来、より充電ニーズが高まることは疑いないでしょう。事業用EV充電器の多様なニーズに対応できるよう、新電元工業には様々なラインナップが揃っています。

2025年にリリース予定の急速充電器「MITUS」は、充電性能の向上、複数EVの同時充電、ユーザーによる価格・電力量の決定など、多様な機能の搭載を実現しています。また、2024年度のグッドデザイン賞を受賞した「見せない普通充電器」は、トラック基地や従業員・ゲスト用駐車場など幅広い場所への設置が可能で、照明器具などのエクステリアに組み合わせて使用することができます。

5.まとめ

事業用EV充電器は、従業員が使用するEVの充電設備として活用したり、自社施設の充電設備として設置したりと、設置の目的に応じて選ぶ種類や運用スタンスなどが変わってきます。目的にマッチする充電器を導入できれば、これまで社用車にかかっていた燃料コストの削減や、充電完了までの時間を想定した施設滞在時間の延長などが見込めます。普通充電器・急速充電器はそれぞれの導入メリットが異なるため、自社が運用するにあたり、メリットがデメリットを上回る見込みかどうか慎重に検討しましょう。状況によっては、自社の要求を満たす新しいモデルが登場してから導入を検討するのも一手です。

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