• TOP
  • ビジネスコラム
  • EVが抱える課題とは?車体やインフラの問題点から開発状況まで解説

EVが抱える課題とは?車体やインフラの問題点から開発状況まで解説

2022年12月掲載

EVに興味があっても、価格の高さや充電設備の少なさから購入を躊躇しているという方も多いのではないでしょうか。日本は「2035年までに新車販売で電動車を100%にする」という目標を掲げていますが、EV化のスピードが他の先進国よりも遅れています。

EVの普及が進まない背景には、車体とインフラにおける課題が残っていることがあげられます。

そこで今回は、EVが抱える2つの課題と解決に向けて行われている取り組みを解説します。

【目次】

1.EVの車体への課題

近年では、多くの自動車メーカーがEV開発に注力しており、開発技術も大きく飛躍しています。そんな中、現状のEVが抱えている車体への課題をみてみましょう。

車体価格
EVの普及を阻む要因の1つが価格の高さです。EVの車体価格は電気自動車(BEV)やプラグインハイブリッド自動車(PHEV・PHV)で約300万円以上、燃料電池自動車(FCEV・FCV)では700万円以上にもなります。100~200万円台から購入できるガソリン車と比べるとまだまだ高額なので、手の届かない消費者が多いのではないでしょうか。
また、自宅や事業所などに充電設備を設置するのにもコストがかかります。高額な車体価格に加えて充電器の設置費用がかかるとなると購入者層も限られるでしょう。
ただし、現状でも補助金や減税があったり、ブレーキパッド交換やオイル交換などのメンテナンス費が抑えられたりと長期的な視点でみればガソリン車よりも費用が抑えられる部分があります。性能面においても静音性や加速の良さがあり、ガソリン車よりもコストパフォーマンスが良いと感じる方も多いようです。

航続距離
現状EVの平均航続距離はBEVで約300〜500km、PHEVはガソリン走行距離を除いて約65〜95km、FCEVで約650km~850kmとされています。ガソリン車が一度の給油で600㎞~1500kmほど走行できることを考えると、長距離走行や燃料補充のタイミングなど同じように運用するのは難しいかもしれません。
しかし近年では、モーターや駆動回路の高効率化や熱エネルギーマネジメント、車体の空気抵抗低減、バッテリーの高密度化や低コスト化などの技術革新により 、年々EVの航続距離も伸び続けています。
例えば、2010年に発売された国産EVの航続距離は約200kmでしたが、現在では450㎞以上になりました。まだガソリン車と比べると航続距離は短いですが、休憩時間や用事を済ませる時間を活用して充電するなど工夫次第でカバーできるでしょう。

蓄電池のリユース・リサイクル
EVで主流の「三元系バッテリー」と呼ばれる蓄電池は、リチウム、ニッケル、コバルトなどのレアメタルを原材料に含み、エネルギーを大量消費する中で製造されています。そのため、蓄電池のリユースとリサイクル体制を確立することも重要な環境課題の1つです。
EVに搭載する蓄電池は寿命が早めに設定されており、別の用途にならリユースすることができます。また、蓄電池として利用できなくなっても分解して原材料を回収する技術が確立して普及すれば、リサイクルすることがでるでしょう。
車としての役目が終わった後も、資源として再活用することができる点はEVならではの魅力です。

2.EVのインフラへの課題

EVを普及させるには、インフラへの課題をクリアしなければなりません。

2021年時点での全国における充電インフラは、急速・普通充電が約3万基、水素ステーションが162か所です。

充電環境が自宅や近所にあるユーザーは気軽にEVに乗れますが、特に地方部では充電器の設置されていない空白地域が目立ちます。自宅に設置したくても、集合住宅であれば導入の合意を取るのが難しいという問題も考えられるでしょう。

インフラへの課題は政府も問題視しており、整備に補助金を出すなどの対策を実施しています。今後インフラが整備されるにつれてEVの需要も高まっていくことでしょう。

3.驚異的な技術革新でEVの「課題解決」の先を目指す!

EVの技術は実用レベルに達しており、普及価格帯の軽自動車までラインナップが拡充されつつあります。電動車100%に向けて技術的な課題は残しつつも十分に解決可能な圏内にあり、もはや“未来の乗り物”ではなくなりました。

現実にEVが普及するためには、多くの人が望んでEVを購入しなければならず、そのためにはガソリン車を超える「魅力」が必要です。実用に向けた課題解決よりもその先にこそ、本格的なEV普及があるといえます。

EVの静かで力強い走行性能は、すでに多くの人々が魅力を感じているでしょう。残る課題として、充電運用の不安を払拭する充電インフラ整備と、多くの人が購入しやすい価格設定があります。

また、EV普及に向けた課題は技術的なものばかりではありません。私たちがEVの適切な運用方法に順応していくことも大きな課題といえるでしょう。ガソリン車と同じ運用方法にこだわらず、EVならではの楽しみ方を見つけていく必要があります。そのためにも、レンタカーやカーシェアサービスを活用してEVを体験してみてください。

4.日本でのEVの課題解決に向けた取り組み

経済産業省は「次世代自動車戦略 2010」内で、2030年までにEV全体の普及率50~70%を目指すという目標を掲げています。これに対して2019年時点の実績は39.2%であり、それなりの結果が出ているように見えますが、実際には全体の34.2%をHEVが占めており、BEVやPHEV、FCEVはほとんど普及していません。

このような状況を打破するために、政府は以下のような取り組みを進めています。

EV供給側に対する取り組み
・充電インフラや水素ステーションの整備補助
・蓄電池や燃料電池などの開発予算補助

EV需要側に対する取り組み
・購入補助
・エコカー減税など

政府は令和4年の予算としてクリーンエネルギー自動車導入事業費補助金として約330億円、燃料電池自動車の普及促進に向けた水素ステーション整備事業費補助金として約110億円、電気自動車用革新型蓄電池技術開発や省エネ型電子デバイス材料の評価技術の開発事業として約50億円を公表しています。

EV購入補助金に関しては、2022年3月からEV(軽自動車を除く)で最大85万円、EV(小型自動車・軽自動車)またはPHVで最大55万円、FCVで最大255万円の補助が出るようになりました。

また、開発予算の補助により環境・開発面の課題、充電インフラの整備や補助金によってEV普及の課題を解消できれば、「2035年までに新車販売で電動車を100%にする」という目標も達成できるかもしれません。

5.まとめ

EVにはHEV・BEV・PHEV・FCEVの4種類があり、これらが多くの人にとって魅力的なモビリティになるためには、あと少し技術や価値観の変革が必要です。

具体的にはEVの車体価格や航続距離、蓄電池のリユース・リサイクル体制の確立が挙げられます。また、積極的にEVが選ばれるようになるためには、ガソリン車には無い付加価値の創出や、私たちのライフスタイル変革も必要になるでしょう。

EVの普及を促進させるため、政府もインフラの整備補助や開発予算の補助、購入補助や減税といった手立てを講じています。今後のEVの発展に期待したいところです。

関連リンク

トップへ戻る