完全自動運転の未来も近い?5Gによる自動運転の発展と今後の課題

2022年9月掲載

自動運転開発の鍵となるのは、新たな通信基盤として話題になっている5Gだといわれています。5Gの通信技術で自動運転はどう変わるのか、私たちの生活にどのような影響をもたらすのか気になりますよね

今回は、自動運転技術の現状や5Gで自動運転はどう変わるのか、今後解決すべき課題などについて解説します。

【目次】

1.自動運転レベルとは?自動運転の現状について把握する

自動運転というと、無人の車が勝手に走るようなイメージを持っている方が多いかもしれません。しかし、そのレベルに至るにはまだまだ高い技術力が必要で、開発にはそれなりの時間がかかります。

自動運転には0〜5まで6つのレベルがあり、完全に無人で走る自動車はレベル5。現在の開発状況はレベル3~4といったところです。レベル3以上は運転者がシステムとなる「高度な自動運転」と定義されています。

自動運転レベルの詳細は以下の図の通りです。

レベル 各レベルの概要 運転操作の主体 車両の名称
レベル0  

運転者が全ての運転操作を行う
アクセル・ブレーキ操作またはハンドル操作のどちらかが、部分的に自動化された状態

運転者

レベル1 アクセル・ブレーキ操作またはハンドル操作のどちらかが、部分的に自動化された状態 運転者 運転支援車
レベル2 アクセル・ブレーキ操作およびハンドル操作の両方が、部分的に自動化された状態 運転者 運転支援車
レベル3

特定の走行環境条件を満たす限定された領域において、自動運行装置が運転操作の全部を代替する状態。
ただし、自動運行装置の作動中、自動運行装置が正常に作動しないおそれがある場合においては、運転操作を促す警報が発せられるので、適切に応答しなければならない。

自動運行装置
(自動運行装置の作動が困難な場合は運転者)
条件付自動運転車
(限定領域)
レベル4 特定の走行環境条件を満たす限定された領域において、自動運行装置が運転操作の全部を代替する状態 自動運行装置 自動運転車
(限定領域)
レベル5 自動運行装置が運転操作の全部を代替する状態 自動運行装置 完全自動運転車

国土交通省「自動運転車の安全技術ガイドライン」より引用

日本では2020年4月からレベル3の公道での走行が解禁。2022年3月には、レベル4の公道走行を許可する制度を含むさらなる改正案が閣議決定され、実用化目前という段階まで進んでいます。

今後、レベル5にあたる完全自動運転の実現を目指すには、膨大な情報の収集と反映をスピーディーに処理する通信技術が必要です。大容量のデータを高速で遅延なく、安定的に通信できる5Gは、自動運転のさらなる発展に大きく貢献することでしょう

2.5Gによって自動運転はどのように発展する?

5Gには通信の高速化、低遅延化、多数同時接続化と、大きく分けて3つの特徴があります。5Gが自動運転の発展にどのような影響を及ぼすのか見ていきましょう。

通信の高速化
5Gの通信速度は最大10〜20Gbpsとも言われ、これは4Gの約10〜20倍の速さに当たります。2時間の動画を3秒でダウンロードできるスピードです。
5Gの高速通信を活かせば、道路データを詳細に把握するための大容量3D高精度マップのダウンロードも簡単です。さらに交通規制や混雑情報などのビッグデータを収集管理するクラウドや、道路や信号機などのインフラ、車載センサーによる測定データの集約も高速化でき、リアルタイムのフィードバックが実現します。

通信の低遅延化
5Gの通信遅延は4Gの1/10程度の1ms(1/1000秒)で、動画の視聴中に遅延が発生しても気づかないほどの些細なものです。通信の低遅延化は自動運転の遠隔制御を可能とし、自動運転レベル4の実現性を高めました。
現在の自動運転は、機能が車体本体に備わった「自律型」が主流ですが、5Gの活用で遅延が少なくなれば、走行中の映像を高精度かつ瞬時に管理センターへ送れるようになり、遠隔型制御による安全性が向上します。ローカル5G設備を使った自動運転の実装実験もすでに始まっています。

多数同時接続化
5Gでは4Gの約30倍に当たる、100万台/㎢のデバイスの同時接続が可能です。5Gを使えば自動運転車についた多数のカメラ、レーダー、センサーなどのデバイスを同時にインターネット接続し、リアルタイムで通信を行うことができます。
交通量の多い場所でも通信障害が起こりにくく、瞬時に必要な情報を集められるため安全性の確保にもつながります。

3.5Gで自動運転が進歩すると出てくる課題

5Gは自動運転を進歩させるために欠かせない通信技術ですが、その特性ゆえの注意点もあります。自動運転実現に向けた課題も確認しておきましょう。

通信インフラの整備
運転操作の主体がシステムになるレベル3以上の自動運転車では、安定した通信環境が必須です。通信が途切れると、判断が遅れて事故につながる危険性があります。
しかし5Gの電波には直進的に進む、飛距離が短いという性質があり、トンネル内や山奥、建物の多い繁華街では電波が正常に届かない可能性があります。地方や路地でも圏外にならない通信インフラが必要でしょう。

法律の整備
自動運転技術の発展に法整備が追いついていない現状があります。2022年3月にはレベル4自動運転車の公道走行を許可する道路交通法改正案が閣議決定されました。成立すれば無人運転が実現しますが、走行中に事業者が遠隔監視を行う義務があり、完全な自動運転は認められていません。
また、事故が発生した時の責任を所有者が負うのか、乗っていた人が負うのか、自動車メーカーが負うのかについても様々な見解があり、議論は尽くされていません。
道路交通法の整備と刑事責任の明確化を進める必要があるでしょう。

セキュリティ対策
通信接続するデバイスやシステムが増えると、その分セキュリティ上の危険が増します。万が一自動運転車がハッキングやサイバー攻撃を受けた場合、重大な事故を引き起こしかねません。
さらにインターネット経由で引き起こされた事故は、原因の追及や、事故の責任の所在を割り出すことが困難です。運転の安全性を確保するために、強固なセキュリティ対策が求められます。

4.5Gによる今後の自動運転化の動き

2020年7月に策定された「官民ITS構想・ロードマップ2020」には、2025年を目途とする目標として「レベル4の自動運転車の市場化」「移動サービスや物流サービスにおける自動運転の導入と普及」を示しています。

さらに総務省は「2025年度末までに5Gの人口カバー率97%」を目指すとしており、自動運転に必要な通信インフラ整備も進行中です。

5Gの全国的な普及が実現する2026年以降は、「レベル4自動運転車の公道走行の実施」が構想として挙げられています。

実現すれば、交通事故や渋滞の軽減、物流の革新的効率化が進み、高齢者や障害者も自由に移動できる社会が実現するでしょう。

5.まとめ

自動運転技術は、0〜5まで6つのレベルに分けられます。日本ではすでにレベル3「自動運転車の公道走行」が解禁されており、レベル4に関する法改正も進んでいます。

今後、完全自動運転の実現を目指すには、大容量で超高速、さらに低遅延で多数同時接続のできる5G通信技術が不可欠です。しかし通信インフラや法律の整備が間に合っておらず、さらなるセキュリティ対策も求められます。

そんななか日本政府は2025年を目処に「レベル4の自動運転車の市場化」「物流・移動サービス分野への自動運転の導入と普及」の実現を目指しています。交通渋滞の緩和や交通弱者のサポートなど、自動運転は多くの社会問題解決につながるでしょう。

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