5Sパッケージの大電流化を実現!D35XB80

  • 開発秘話「5Sパッケージの大電流化を実現!D35XB80」

今回は、新電元工業の代表的な半導体パッケージである“5Sパッケージの大電流化”がテーマ。従来の5Sパッケージの構造を一新し、大電流化して生まれたのが新製品「D35XB80」です。開発に携わったエンジニアや営業マンが、当時の苦労や喜びを振り返り、製品の特長や当社のパッケージング技術について自ら語ります。


(左)
久保 隆之
営業担当
1995年入社。家電市場や車載市場をメインに、様々な業界のお客様を担当している。

(右)
新井 寿和

半導体エンジニア
1997年入社。ダイオードとサイリスタを中心としたディスクリート半導体の開発に携わっている。

目 次

変化する時代のニーズと5Sパッケージ

新電元工業が、世界で初めて開発し、半導体業界で長い歴史をもつ「5Sパッケージ」。

開発当初は、当社オリジナルパッケージでしたが、白物家電メーカーのお客様を中心に高い評価を得て、今では世界標準パッケージにまで成長しました。「新電元=ブリッジダイオード」のイメージが半導体業界に根差したのも、この5Sパッケージの存在が大きいです。

5Sパッケージは、開発当初の1980年代は出力5Aでしたが、その後の技術深化により、同じ内部構造でありながらも25Aまで出力可能となりました。しかし、昨今では家電や産業機器など、あらゆる最終製品の高機能化や付加機能の増加により、大電力化のニーズが強まっています。それに伴って、5Sパッケージにも更なる大電力化が求められるようになりました。

初期開発から約35年経った今、当社は25A以上の大電力化を実現する為に新たな内部構造「5S GEN2」を開発しました。また、その新構造を取り入れた新製品「D35XB80」の製品化に成功しました。

どんな出来事が開発のきっかけとなり、どんな苦労があったのでしょうか…。

  • 5Sパッケージとは?
  • 5Sパッケージとは?

変化する勇気!きっかけはお客様の“声を聞く”ことでした。

  • インタビュー写真

久保(営業):
私が担当していたお客様は、使用していた他メーカーのブリッジダイオードの放熱性が悪く、非常にお困りでした。

当時、お客様が使用されていたブリッジダイオードは5Sパッケージで出力電流25A以上の大電流タイプの製品でした。その頃は大電力出力が可能な製品が少なかったので選択肢がなく、その製品を使わざるを得なかったのでしょうね…。

そのような中、お客様から「5パッケージの外形はそのままでありながら、25A以上の出力が可能で、発熱が小さいブリッジダイオードが欲しい。ダイオードを得意とする新電元工業で作れないか?」という要望がありました。要望を聞いた時は、非常に嬉しかったです。当社への信頼が厚いからこその依頼だと思いますし、その期待に応えたいと思いました。

しかし、25Aを超える大電流品を開発するには、長い歴史をもつ5Sパッケージの内部構造を一新する必要がありました。これまで、変わらずにいたものを変えるには大きなエネルギーが必要です。“変化する勇気”を持って、社内で何度も話し合いを重ね、少しずつ理解と協力を得ながら、新しい内部構造「5S GEN2」を開発することが決定しました。更に「5S GEN2」を採用し、従来の限界値であった25A出力を超えた35A出力が可能な新製品「D35XB80」を製品化することになりました。

大電流化実現の困難。品質と課題の解決を図る新電元の技術力!

  • インタビュー写真

新井(エンジニア):
単純に、より大きいチップをパッケージに搭載すれば、大電流化は達成できます。しかし、より大きな電流が流れれば、その分、パッケージ全体の温度が上昇しやすくなり、発熱は不具合の原因となります。今回、お客様が使用していた他メーカー品も、やはり動作時に端子温度が高く、特定の端子に偏った温度分布となっていました。その結果、パッケージ全体の温度も大きく上昇し、温度の偏りも極端になっていました。

これらの課題をクリアして5Sパッケージの放熱性能をより高めるために、30パターンを超える内部構造のシミュレーションを繰り返し検証しました。リードフレーム幅やチップの配置位置、モールド樹脂の厚さなど、様々な条件を変化させながら掛け合わせ、最適な組み合わせを探りました。

その結果、生まれたのが「5S GEN2」です。5Sパッケージの外形のままでありながら、放熱性を高めることによって、大電流チップを搭載することができ、従来の最大出力25Aから35Aへと大幅に大電流化を実現できました。

外形を変えることができれば、大電流化もそこまでハードルは高くないのですが、今回の開発においては、外形は5Sパッケージのままであることがお客様からの要望でした。様々な制約があるなかで、最適な内部構造にたどり着くまでにかなり苦労しましたね。

  • インタビュー写真

OneTeam!!新電元全体でお客様の期待に応えます!

  • インタビュー写真

新井(エンジニア):
ようやくサンプル品ができ、お客様に評価をお願いしたところ、すぐに評価を実施してくださりました。他社品では非常に苦労していた発熱の問題が対策できました!と喜びのご報告をいただき、とても励みになりましたね。

また、長年変わらずにいたものを変えることができ、当社の歴史に残る開発となったことに上長からも称賛を受け、印象深く心に残っています。更に卓越した技術開発を行ったと評価され、社内表彰もされました。長い間、販売しているパッケージのバリエーションとして自分が設計したものが組み込めたことは非常に誇らしいです。

久保(営業):
お客様の量産スケジュールと社内の開発スケジュールの調整では苦戦しました。当初は、お客様が期待するスケジュールでは到底開発が追い付きませんでした。しかしながら、お客様が当社に大きな期待を寄せていることを繰り返し関係者に伝え続けたことで、少しずつ社内の空気感も変わっていき、一体感が生まれました。社内の連携が強いからこそ、お客様の問い合わせにも都度、スピーディーかつ正確な対応をすることができました。

今後も、顧客の要望に寄り添い、協力を惜しまず、より良い製品を提案できるように精進したいです。新電元工業がOneTeamとなり、お客様の期待に応えたいです!

  • インタビュー写真

  • インタビュー写真
  • 新井&久保が語る、D35XB80のココがスゴイ!

新井&久保が語る、D35XB80のココがスゴイ!

POINT1.業界標準の5Sパッケージはそのまま
長年の採用実績と厚い信頼がある5Sパッケージの外形がそのままなので、従来品から置き換えた場合、基板や実装工程を変更する必要がありません。

POINT2.端子温度100℃以下(25℃水冷放熱フィン取り付け、35A出力時)
POINT3.端子温度差が極めて少ない
「5S GEN2」は、リードフレーム幅やチップの配置位置、モールド樹脂の厚さなど、様々な条件を変化させながら掛け合わせ、最適な組み合わせを実現しました。それにより、端子温度の低温化、均一化に成功しました。お客様での基板実装信頼性の向上に大きく貢献致します。

編集後記

新電元工業の顔とも言える「5Sパッケージ」。そのような製品を、初期開発から約35年ぶりに大幅な構造一新できたのは、長年蓄積されてきたノウハウがあるからこそです。その後、最大出力40A「D40XB100」もリリースされ、あらゆる市場のお客様から高く評価されています。
更に、2021年より当社の朝霞事業所が開業され、研究開発部門と販売部門(及びスタッフ部門)が一拠点に集約されました。製販一体となり連携力を強めることで、お客様によりスピーディーかつ正確に対応いたします。大電力化や放熱性などでお困りのお客様は是非、お問い合わせください。

関連製品

本ページに記載されている内容は、2023年4月現在の情報です。お客様がご覧いただいた時点で、情報が変更(生産・販売が終了している場合や、価格、仕様など)されている可能性がありますのであらかじめご了承下さい。

トップへ戻る