EV充電器の普及は進んでる?課題と今後求められること

2022年9月掲載

EVの購入を考えるにあたり、気になるのが充電スポットの普及状況ではないでしょうか。充電インフラが整っていなければ、安心してEVに乗ることはできないでしょう。

日本では、国や大手自動車メーカーが中心となってEV充電器の設置を進めています。拡充に向けた課題や取り組みを確認しておきましょう。

今回は、EV充電スポットの現状と普及に向けた課題、充電インフラの今後について紹介します。EV購入を検討するヒントとして、ご活用ください。

【目次】

1.増えるどころか減少傾向に!?EV充電インフラ整備の現状

日本では2014年頃から充電インフラの構築が進められ、充電スポットの数は年々増え続けていましたが、2020年に初めて減少に転じました。

地図製作大手「ゼンリン」の調査によると、2020年度末時点で国内のEV充電器は29,233基。前年度よりも3.6%減と、調査記録の残っている2012年度以降初めての減少となっています。

EV充電スポットの数が頭打ちになっている理由は何なのでしょうか。その理由を紐解いていきます。

2.EV充電器の普及に向けた4つの課題

EV充電スポットをさらに普及させるためには、いくつかのハードルを超えなければなりません。ここでは、4つの課題について説明します。

・設置スペースの課題
・長距離経路確保の課題
・長期運用の課題
・事業採算化の課題

設置スペースの課題
EV充電スポットは、EVユーザーが使いやすい場所に設置する必要があります。
都市部は公共の駐車区画が少なく、有料駐車場の中など限られたスペースに設置する必要があります。充電のための立ち寄りにも駐車料金がかかりますので、サイズや型を工夫して空間をうまく活用しなければいけません。
地方部は広い駐車スペースを確保できますが、戸建て住宅のコンセントで基礎充電をしやすい環境もあり、日常生活での公共充電スポットは限定的になると考えられます。
その他、幹線道路沿いや観光駐車場など、交通量や滞在時間に応じたEV充電スポットのデザインを模索する必要があります。

長距離経路確保の課題
経路充電で重要な役割を担うのが高速道路のサービスエリア・パーキングエリアです。利用者が多く、充電器の稼働率は高いものの、曜日や時期によっては駐車スペースが不足気味となるため、増設は容易ではありません。

また、高速道路では複数口の急速充電器設置が求められますが、大規模工事が必要で費用もかさみます。採算が取れないと判断されることもあるでしょう。
一般道ではロードサイド店舗に設置された充電スポットを利用するユーザーが多いですが、閉店後に利用制限がかかる場合があります。国を挙げて公道への設置を進めることが必要です。



長期運用の課題
増加していた充電スポットの数が横ばいとなっている大きな理由のひとつが老朽化です。
EV充電器の耐用年数は8~10年が目安です。充電インフラの整備が2014年頃から始まったため、2022年頃から交換のタイミングに当たります。
国や地方自治体が更新を求めても、事業者側は採算が合わないと解約を申し入れるケースが多く、契約満期に伴い撤去される充電器は少なくありません。

事業採算化の課題
近年ニーズが高まっている急速充電器の導入には、高額な費用負担が発生します。設置に2,500万円、ランニングコストに250万円/年かかる事例もあります。
高稼働を見込めるコンビニエンスストアや大規模店舗、高速道路のサービスエリア・パーキングエリアでも採算が合わないと判断され、事業者は設置をにぶるようです。

3.EV充電器の更新・普及で求められること

EV充電スポット数の伸びが停滞していますが、小型充電器や高出力充電器を適材適所に設置することで、スポット数を大幅に増やさずに利便性が向上できる可能性があります。

EV充電器の新設や更新にあたっては、地域の特性や充電需要を考慮した充電器選びが重要です。

また、日本自動車販売協会連合会(自販連)と全国軽自動車協会連合会(全軽自協)が集計したデータによると、2022年上半期におけるEVの国内販売台数(軽自動車含む)は、前年同期の2.1倍に当たる、1万7771台でした。

今後順調にEV台数が増えていけば、充電器の稼働率も上がりますが、平均稼働率20%を目安に充電渋滞が発生しやすくなります。

充電渋滞が発生しやすいのは、主に高速道路や幹線道路沿いの休憩施設をはじめとする、長距離移動の経路地です。繁忙シーズンや混雑時間に対応できるように、複数台設置や高出力化などの設備増強が待望されます。

必要な場所に必要な充電器を集中的に整備すれば、今よりも少ない充電スポット数でも利便性の高い運用ができるでしょう。

今よりも利便性の高い充電スポットを普及させるためには、できるだけ多くの人が実際にEVを利用し、EVへの知識や関心を高めることが大切です。ただ充電スポット数を増やすだけでなく、「どこに、どのような充電器を設置すれば便利になるのか」が今後の充電スポット整備の重要な着眼点になります。

4.政府方針で充電インフラ大幅拡充へ!今後の動き

充電インフラの拡充に課題はあるものの、将来の普及率については明るい未来予測も見られます。

富士経済は「2035年に普通充電器の市場規模が2020年比159.0%増の132,000個となり、急速充電器の市場規模は162.3%増の12,700個を見込む」という予測を発表しました。

また、日本政府は2021年に発表した「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」において、「2030年までに公共用の急速充電器3万基を含む、充電インフラを15万基設置」という目標を打ち出しています。

目標を達成するには補助金の拡充など、国による支援制度が必要ですが、充電インフラ15万基が実現すればEVユーザーの利便性は格段に上がります。長距離移動への心理的ハードルも低くなるはずです。

EV充電スポットは設置に加えて維持自体も負担になりやすいですが、国やメーカーによる様々な取り組みを経て、EVを利用しやすい社会が実現されていくでしょう。

5.まとめ

日本国内では、2014年頃からEV充電器の数が右肩上がりに増加していましたが、2020年に初めて減少に転じました。国内のEV販売台数は増えているため、充電インフラの維持と拡充は実現させなければなりません。

EV充電スポットの普及には、地域による課題、経路充電における課題、設備老朽化の課題、事業者側の課題と4つの課題があります。メーカーの開発努力や政府の資金補助といった課題解決に向けた取り組みに期待が寄せられます。

関連リンク

トップへ戻る